- ナノ -

フラグが立った!B
どうやらやってきたのは一人だけではなかったらしい。
もう一人、扉の奥にいた黒髪長髪の、綺麗な顔をした青年がいた。
その青年は冷静なようで、何処か苛付いた表情をしつつも、取り乱す様子はない。
しかし、もう一人がやばかった。かなり混乱した様子で、どういうこと!? と騒ぎ立てている。

うーん。煩い。

「だって、アレクセイは……!」
「少し静かにしてくれませんか」
「ッ、申し訳ありません」
「……え?」

間抜けな声が出たことを許して欲しい。
だって、え? なにこれ。どうしたの。行き成り態度が畏まったけど。あと雰囲気も一瞬にして変わったけど。
待ってくれ、何これ。アレクセイという人物とこのおっさんはどういう関係だったの。怖いんだけど。
私が戸惑っていると、黙ったままのおっさんを置いて、青年が喋り出した。

「それで、アンタは記憶がねぇってのか」
「そういうことになりますね……」

凄く。怖いです。
苛付いているからなのだろうが、その目線が痛い。敵対心が丸出して、こちらが口を開けにくいほどだ。
こう、なにか、変な真似をしたら殺す。と顔に書いてあるところがどうにも。

「……ったく、都合いいぜ」
「(いやもうまったくですねあはは)」

言いたいが、いえない。いったら多分斬られる。また。
……また?

斬られる、という言葉が重なった。
まさか、この傷を作ったのが彼だというのだろうか。まぁ、彼の機嫌の悪さから考えればなんとなくそうかもしれないと想像が付かないでもないが、ならどうしてここに来たのだろう。
デュークと同じように何か私から情報を得ようとしたのだろうか。

「せ、青年。記憶喪失って治るよね?」
「確か縁のある場所へ行けば思い出されることがあるってのは聞いたことはあるが……。
 俺はコイツを連れて歩くのはゴメンだぜ」
「でもさ、青年も大将に聞きたいことあったんでしょ?」
「そらそうだけど……」

二人の会話の節々に不穏な言葉が聞こえる。
もしかして、これはここを連れて行かれるフラグか?


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bkm