- ナノ -

異なるC
「本当に戻るのか」
「ああ。私の処遇がどうなるにせよ、帝都にはいかないとならんからな」

一番最悪なのは、デュークが罪人を連れ出したとして犯罪者とされることだ。
流石に、アレクセイ元騎士団長を野放しにしておくのは認められないだろう。

「だが、あいつらは歪にやってこなかった」
「……猶予期間だろう。これ以上戻らなければ、何かしら対策を打たざるを得まい」

なんというか、牢屋での私の様子は曖昧な記憶でもかなりやばかった気がするし。
精神崩壊一歩手前みたいな様子をしていた気がする。ただの想像に過ぎないのだが、こうして本人も記憶が曖昧であるし。というか、口にしていたことも幻想世迷言、そもそも正気を失ったと考えられていてもいいぐらいだ。
世界を危機に瀕死させたことによる良心の呵責による精神崩壊。まぁ、理想を追った悪役にありそうな姿だ。
まぁ、実際はそれよりも何倍もたちが悪いが。

「……私はお前の思いを重視する」
「それは……どういうことだ?」

デュークの言葉に首を傾げる。言葉は有り難そうに聞こえるが、どこか不穏である。
彼が前を向きながらいう。

「お前が死にたいというのならそうさせる、お前が生きたいというのならそうさせる。静かに過ごしたいというのなら、そうなるように行動する」
「……」
「お前の望みを叶えたい」

なんというか。
ーーそんなキャラだったっけ。デューク。
もっとこう、孤高の人って感じじゃ、なかったっけ?
誰かに肩入れするなんて、想像もつかなかったが。
何がそんなにデュークの琴線に触れたのか。
昔からの馴染みだったからか? 一時期だけでも協力した仲だったからか?
内心首を捻っていれば、視線が傾いた。体の首も動いていたようだった。

「……その気持ちは有り難いが、なぜそこまで」

分からないので、聞いた。
何か、デュークは勘違いしているのかもしれない。それとも、私の暴露話を都合よく解釈してくれたのか。だが、それは彼にとっては不幸なことだ。
私はただの、そう、罪のない人々を陥れた罪人だ。
尋ねれば、彼は私に視線を向けた。

「お前が私の、唯一の友だからだ」

結局はそこに行き着くのか。
やはり、彼は何か勘違いしているのかもしれない。
私は君の友であるほど、勇ましく、賢く、強くはないのに。
それでも、彼の言葉を否定するのは彼への侮辱なのだろう。
私を生かし、私を殺そうとしてくれた男。

ああ、それでも、彼への侮辱となろうとも。
私を友などと言う君に、否と口にしなければならない。
君は、私とは違うのだから。

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bkm