「パレストラーレとユニオンが対立し、ドン・ホワイトホースが自害するように仕向けたのは私です。ただ、その後の遺体失踪、ホワイトホースの生存について私は関わっていません。彼が生きていれば、私の計画に支障が出る。知っていたら直ぐに手を打っていました。そのフードの男についても知らぬ相手です。私の計画に気付いていたのか、それともただの世迷言の出任せを口にした者か。残念ながらそこまでは知りません。
心臓魔導器については、お察しの通り人魔戦争で心臓を失ないました。しかし、元から死ぬ可能性も考えた上で、保険のために心臓魔導器を用意していました。評議会とは関わりはありません」
「……ドン・ホワイトホースの生存、フードの男については無関係。そして心臓魔導器は貴方の指示で設置したと……?」
「はい」
真っ当に考えればそうだ。
ホワイトホースの生存も、フードの男もアレクセイ・ディノイアとは無関係である方が流れも正しい。アレクセイは世界を手中に収めるために行動していたのだ。ホワイトホースを生かす理由もなければ、フードの男になり切る必要もない。
心臓魔導器は、私以外の二人には私が設置するように命じたのだ。自身のために、もしもの保険を持っていたとしても不思議ではない。
ガラス越しの人々が皆、険しい表情をして、ローウェル君など今直ぐにでも剣を抜きそうなほどだ。ああ、恐ろしいな。
「本気で言ってんのか」
怒りの炎をため込んだ声が聞こえてくる。
それに、静かに返した。
「本気も何も、私が知っていることを話したのみだ」
ギチリ、と拳を握る音を耳にする。すぐ、隣から。
だが、ガラス越しの彼は更に続けた。
「死にてぇのか、テメェは……!」
彼は私の生死にそこまでの頓着はないはずだ。
ならそれは、私を生かそうとした人々の気持ちを知っているからこそのセリフなのだろう。
ああ、そうだな。優しい人々が、こんな私に手を差し伸べてくれた。
そうだ。だが、そうであったとしても。
「帝国騎士団長として、私は世界を正すために行動した。その結果がああであるならば、私の野望も果たせない。今更、生恥を晒し続けたくはあるまいよ」
ほら、納得できるだろう。
記憶を思い出して死のうとしたのも。
罰を欲しているような素振りだったのも。
生恥を晒したくないからだよ。プライドがこの生を肯定できないからだよ。
分かっただろう。私は、たしかに、
「クソ野郎が……ッ!!」
そう形容されて、然るべき人間なのだと。