- ナノ -

私の名前は番轟三というらしいC
「れ、霊媒師?」
「……あァ、らしいぜ」
らしいって、マジか。
裁判所で知り合った夕神さん。初対面時は怖かったが、なんだかんだで色々話を聞いて貰える間柄になった。まさか私の手元にやってきた番さんのスマホで初めて連絡先を交換するのが夕神さんになるとは思ってもみなかった。
色々と相談させてもらったが、その中で私は一つ思い切って尋ねてみた。所謂――除霊とか、出来るお寺とかに覚えはないかと。
普通に、最初は何を言ってんだ? と言われたが、とりあえず探しているのだとなんとなく伝えた。知らなかったら知らないでいいのだ。本当に除霊が出来る場所が見つかってしまったら、私は祓われるかもしれないのだし。が、数日後裁判所に来いといわれて訪れた先で、夕神さんが『霊媒師の知り合いがいる知人がいる』と言い出したのだ。
「それは、その……信頼出来る人なのかな?」
「さァな。一応、そいつらは信じてるらしいが」
う、うーん。微妙な所。夕神さんは半信半疑っていうところだろうか。
けれど、夕神さんからの紹介だし試してみる価値はあるかもしれない。
「その、都合が良いときに連れて行ってくれないかな」
「……どうして除霊なんかに興味あンだ?」
うっ、痛いところを。
確かに、除霊に興味があるのはおかしな話だろう。何か、都合の良い言い訳を考えないといけないが。
「少し、気になる所があって……」
「気になる所? 霊障でも起きてんのかァ?」
そんなたいそうなもんじゃないけど。まぁ、起きているといえば、起きているだろう。現在進行形で。
「そう、だね。その……『番轟三』に、取り憑いているというか」
そう、私が。
おかしな奴だと思われるのは悲しいが、言わないわけにもいかないので、ごにょごにょと核心を避けながら話せば、夕神さんが鼻で笑う。
「なんだァ? 『亡霊』にでも取り憑かれてるってか」
夕神さんって以外とのってくることが多いよな。見た目は怖いが、楽しい性格の人なんだよなぁ。などと思いながら、言われた言葉に納得する。亡霊か、確かに言い得て妙だ。
「そうかもしれないね」
私も死んでいるし、そういったものの類いだろう。けれど、そう返した後夕神さんは無言になってしまった。
え、マジレスすんなって感じですか。ごめんなさい。

prev next
bkm