- ナノ -

一緒に暮らそう!
キャラ崩壊

いや、分かっているのだ。本当は殺さなくてはならないことぐらい。
成り代わるのなら、生きている人間相手ではいけない。死んでいなければ、生きている対象が何か行動を起こして二人居ることがばれてしまったら一発アウトだ。だから、顔を借りて成り代わる場合はしっかりと相手を殺す。基本中の基本だ。
そして今回は、必ず彼でないとダメだった。何せ彼は夕神検事の担当刑事になるということだった。担当刑事になれば、彼に信頼してもらいやすいだろうし、捜査の際にも色々手が出しやすい。
都合良く、HAT-2の妨害依頼も来ているし。もうこれ異常ないぐらいいい立ち位置なのだ。
なのだが――彼、番轟三という刑事はなかなかに興味深い相手だった。正義のために働く熱血漢。それぐらいなら今までも何人も見てきたわけだが。なんというか、簡潔に言うと、惹かれた。
面白い奴だな。と思ったが最後。殺すのが惜しいな、などと思ってしまって参ってしまった。
しかし任務のためには彼に成り代わらなければならない。となれば、殺さなければ。
しかし、殺したくはない。ならどうするべきか。
――仕方が無い。ほとぼりが冷めるまで監禁しよう。
監禁して、HAT-2の妨害任務と昔の事件でちょっとミスして残ってしまった証拠品。それから夕神検事が持っているらしい私の心理検査の書類を破棄して、さっさと消息を消して、彼と一緒に旅に出よう。
そうしよう。それがいい!
思い立ったが吉日。私は番刑事に重傷を負わせて、私以外知らない隠れ家に彼を連れて行った。
後はほどよく多量の薬を混ぜ合わせ、彼に飲ませて意識を混濁させれば準備は万端。
その後は私がしっかりと任務を果たして、彼と共に国外逃亡だ。
そして新しい仮面を被って、きっと一人では生きていけなくなっている彼とともに過ごそう。
うん、なんだかとても楽しそうだ。きっと彼も喜んでくれるだろう。番刑事だって、後輩の私とともにいたときはとても楽しそうにしてくれたのだから!
いやー一年後、楽しみだなぁ!

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bkm