- ナノ -

最期B
空から出現する星喰み。崩壊するザウデの魔核。
それを見て、ようやく自分の役目が終わったことを確認した。

長かった。本当に長かった。
誰にも理解されず、誰にも事情を話すことが出来ず。部下を道具として扱い、圧制される人々を見て見ぬ振りをし。
ああ、永遠に続くかと思われたこの10年間! 永久に出られぬと感じていたこの42年の生涯!

……いやぁ。本当に頑張った。これは本当に頑張った。
女性が自分へのご褒美にと菓子やらバックやら買ってあげちゃう心理がよく分かる。だって私頑張ったもの。
苦節42年! 大切な人が皆殺しにされ、その殺人犯をぬっころし、私も後を追ったらやってきたこの生涯!
どんな白羽の矢の刺しかただと思ったが、与えられてしまった体と役割を自覚してしまった人生に、絶望しつつ、生きてきたこの旅路!
ようやく信頼できて心の平穏が訪れる場所を作れたと思って、無茶苦茶に働きかけてそこを破壊されないように努力したのに、全て水の泡になってしまったりしたし。

もうこれ以上生きたくないわー。凄くダミュロン……レイヴンの気持ちが分かる。
だって役目は終わったのだし、世界の大悪党としてここで散る覚悟は出来ている。
どんなにアレクセイ・ディノイヤが悪く言われたって構わないさ。元々そういう筋道だったのだし、死んだ後のことなどどうでもいい。
それに、まぁ、それぐらいの悪さも純粋に行ってきてしまったし。

だから、幕締めとしよう。
この世界の黒幕の悪役はもうただ一人。私だけ。
さぁ、正義の鉄槌を下しておくれ!!

「――ア――セイ!!」

どこかで部下の声が聞こえた気がしたが、きっとそれは空耳なのだろう。

ああ。次の人生では、こんな惨めな前世なんか思い出さずにのうのうと生きていたい。

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bkm