会話文と短い地文だけ。
「心臓の音を聞かせてください」
私にどうしろと。
いやいやながら聞かせてやった。みられて誤解でもされたらどうする。そして恥ずかしい。くっつくなごらぁ。
「脈打つ音が聞こえます」
今はシュヴァーンなんだな。というか、私の前だとそれが板についたのかもな。こいつもこいつで別人を装っているわけであるし。(成りきれていないが)
「何をそんなに不安がっている」
「私は、いつでも不安ですよ。アレクセイ様がいなくなってしまわないか。この心臓が壊れてしまわないか」
「機械なのだからお前の心臓よりも頑丈だろう」
「そう、かもしれませんが」
そういう意味ではないのは百も承知である。しかし、気の利いた言葉は出てこない。私だってこんなもの埋め込まれてまで生きたかったかといわれると微妙だからなぁ。
そんな私の心境を察したのか、後ろから抱きしめる力が強くなった。子供のようだ。
「まぁ、頑丈なのだから、長生きもするだろう。これからが、楽しみだ」
「!」
まぁこんなもの。と思っていても、実際生きてみると、これが面白いものだ。辛くて仕方が無いことも大量に――そりゃあ大量にあるが(例えば部下の態度など)、それでも大切なものが近くにいて、やることが山ほどあるのだから、飽きはしない。
「私も、これからが楽しみです。ずっと、一緒にいてください」
「馬鹿を言え。どこまで付き合わせるつもりだ」
「いいえ、私がアレクセイ様についていくだけです」
これは無理やりだな。絶対。
内心ため息をつきつつも大人しくする。いい大人が、とも思うが、きっとコイツにとってはトラウマなのだろう。私を含めて。
だから、今ぐらいならいいだろう。
そう思って放置しているところを主要メンバーに発見され、シュヴァーンを投げ捨てるのは数秒後のお話。