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花火の明かり10
一週間って意外と長いものだ。もうそれはそれは長い。
普段は学校でカリキュラムを受けている頃だろう。しかし家にいるとなると、筋トレと自主勉ぐらいしかできないし。筋トレの方は怪我の治療の妨げになるからと禁じられている。さらにテレビやスマホ、パソコン。さらには新聞など外からの情報が手に入れられる媒体は一切なし。
そう、自宅謹慎中です。
当然の処置であり、行き過ぎた処置であり、寛大すぎる処置であるように思う。
保護者に告げずヴィラン退治。怪我を負って帰ってきて、普通だったら停学は免れないだろう。それが一週間の自宅謹慎ですんでいるのだから有難いことだ。だが、アパート内に情報端末が一切ないのもおかしな話だ。スマホやパソコンを取り上げられるのはわかる。だが、テレビも本体から回収され、新聞は部屋の中には持ってこない。人が訪ねてくることもなし。
鳥の囀りぐらいしか情報がないこの一週間。
八木さんは反省しなさいとしか言わないが、あの人がここまで極端なことをするともあまり思えなかった。
最近は、学校や授業で頭が占められていたが、実際のところ自分自身の謎はまだ何も解かれちゃいないのだ。
ここまでではないが、何かしら対処はされるとなんとなく思ってはいた。たとえ無傷で時間通り戻っていたとしても、私があの場へやって来たことはどこかしらから漏れるだろうと。
けれど、それでもやめる気にはなれなかった。辞めてはならなかった。

じりじりと身を焼く衝動。救わなければ、助けなければ。
誰を? 殺されるかもしれない、ヒーローたちを? それもそうだ。けれど、それよりも。

「ヒーロー、」

殺し。そう続きそうになった言葉を飲み込む。
彼に対して、今までないぐらいの執着を自分でも感じる。身に覚えがないはずだが、それでも何かあるような気がしてしまう。
きっと、そう、何かあるのだ。
私の記憶と絡んだ、何かが。

「……勉強でもするか」

そうわざと口にして立ち上がる。
次に会う時までには、身体を万全にしておかないといけない。
私の過去に関するピース。この衝動にかけて、絶対に彼とまた会いまみえよう。
そしてきっと。彼の手を掴もう。
背中の傷がずきりと痛み、思考が靄にかかったような気分に陥る。けれど、やるしかない。
私は、ヒーローになる。その確信が揺るがない限り。

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bkm