- ナノ -

あなたは英雄5
空が白んできたのを眺めていた自分に気付く。
全て片付けて、博士が座っていた椅子に腰かけて、窓の外を見つめていた。
目を焼く光に、左手で陽を遮った。新しい白衣は白くて、清潔だ。

「……ガロ」

ガロ、
ガロに朝ご飯を作らなければ。
夜は研究で帰らないことが時折あるから、ガロもうまくやっているだろうけれど、朝ご飯はできるだけ一緒に食べていた。

「ガロが待ってる……帰らなきゃ……」

ゆっくりと椅子の手すりを支えにして立ち上がる。すこしふら付いたが、すぐに持ち直した。
そういえば、今日の分の薬を飲んでいない。気付いて、バッグの中から薬入れを取り出した。三錠手のひらに出して、机にあったビーカーにコーヒーメーカーでコーヒーを入れる。
薬を口に含んで苦いそれで流し込み、ビーカーを流し台に置いた。

prev next
bkm