全て思い出したのは、あの悪夢の日だった。
あらゆるものが信じられなかった。目の前の光景も、腕の中の子供も、失った左腕も、自分のことも。
私はただの学生だった。デウス・プロメス博士というバーニッシュ研究の第一人者の元へ弟子入りして、世界を混沌に陥らせたバーニッシュの抑制と和解・解決に向けて社会のために尽力していく。そのはずだった。博士は事実天才で、周囲より出来が良い、言ってしまえば秀でていると思っていたのを打ちのめされながらも、必死でしがみついていた。しがみついて、世界のために、人のために、自分のために、しがみついて、必死で、必死に――。
けれどそれは、きっと無駄な努力だったんだ。
眼前で業火に燃え盛る家。青い髪色の煤の臭いのする男の子。周囲の喧騒。体の中で唸る炎。
――燃やそう、燃やそう――
――もっと、もっと――
「お兄、ちゃん――」
――いっぱい、燃やそう――
「助けて、くれたの……?」
「……僕、は」
僕は――私は、
私は、クレイ。クレイ、フォーサイト。
どこかで見た架空の話、画面の奥、夢の物語。
そこに『私』がいた。