解説
ギャグだ〜〜〜〜〜！！！
司政官成り代わり。色々あってどうにか犠牲は少なく消火を迎えられたよ！
でもビックリ死刑だって！　おいおい勘弁してくれよ！
でも安心安全設計でそもそも逃げる手段を用意していたのだ！戦略的てったーい！
お薬のんでアジアの女の子になったよ！さて外にでかけようか！！（世間では死んだことになってる）





世界が救いの炎に包まれ、バーニッシュもプロメアもいなくなった。
世界は再び混乱に陥ったが、人々の尽力もあり着々と復興していく。
そうして一年後――世紀の大罪人、世界のほぼすべてを見捨てようとした男の刑の宣告、および実行が行われた。

クレイ・フォーサイト。都市国家プロメポリスを作り上げ、四光年先の未来へ一万人と旅立とうとした男。多くのバーニッシュの人権を侵害し、地球を死に至らしめかけた男は、その身に相応しい極刑によって、鮮烈な生涯を閉じた。


――と、世間ではなっている。
苦節三十年とちょっと。私は日々努力してきた。
地球を救うため、世界を救うため、幼子を養うため、筋肉をつけるため。
そしてつい一年前！　私はやり遂げたのだ。この、クレイ・フォーサイトは！　地球を救って見せたのである！！
ま、一般的には地球を壊しかけた残虐非道な男ですけどね？
それは傍から見ればの話である。当の本人はそんなつもりは微塵もなかった。それはなぜか？　決まっている、その未来を知っていたからだ。
クレイ・フォーサイトが箱舟のり、地球を飛び立とうとするのを阻止すべく、主人公たちが戦いを挑み、そして完膚なきまでのハッピーエンドにすることを！

そう、クレイ・フォーサイトは転生者だったのである！　あとプロメアっていう映画の知識もあったのだ！
どうも、クレイ・フォーサイトです！！！

「っはぁ〜〜〜〜外の空気は旨いなぁ！！！！」

気分はあげあげ急上昇。
陽の光が降り注ぐ青空をビルの間から眺めながら、タピオカを啜る。
ああ〜〜〜最高すぎるんじゃ〜〜〜〜。

ベンチに座り、足を組んで降り注ぐ光に右手を伸ばす。
そこにあるのは細い腕と、すらりと伸びる指、そして丸い爪だ。
それはどこからどう見ても女性の腕である。360度色んな角度から見まわして、思わず笑みを作った。

「かんっぺきだ……」

私は今、筋骨隆々のギリシャ彫刻のような体ではなく、プロメポリスでもそこそこいる黒髪長髪のアジア女性になっている。年齢は十代ですｷｬﾋﾟｷｬﾋﾟ。
いやぁーーーやっぱり三十路と比べると肌の張りが違うわぁ。おばちゃんめちゃくちゃ嬉しい。え？おじさんだろって？煩い前世は女なんだからいいだろこのやろ。
あのスーパーヒーローみたいな体格を手に入れるのも大変だったけど、まぁ仕方がないよね。生き延び外に出るためですもの！

全く世間は酷いもんである。こんだけ頑張ってきたのに極悪人だの大罪人だの悪魔だのなんだってんだ。
ずごーと息を吸えば、すぽすぽとタピオカが太いストローを通って口の中に入ってくる。うむ、もちもちとしていておいしい。プロメポリスは今タピオカがブームである。あとピザ。
そりゃあさ、何も知らない世間から見れば一万人以外を見殺しにしようとしたやつかもしれんけどさ？　実際問題地球救おうとしての行動だったからね？　というか本編でもクレイ・フォーサイトがあの道を歩まなければ完全燃焼できてなかったし寧ろ本編ではあの後クレイ・フォーサイト死刑とか下されなさそうだったのになんで私殺されてるん？　意味わからんのだが。
怒りのままずごー！と吸えばタピオカが喉に直撃して咽た。くそ、タピオカさえも私に牙をむくのか……！

これでも未来分かってるからできるだけ犠牲を少なくしてたんですけどね〜〜。
でもガロの家は他のバーニッシュの炎で燃えちゃったしプロメス博士はバーニッシュの襲撃にあって殺されちゃったし。というかその二つ私のせいになってるんですけどねあっはっは。
いや笑い事ではない。
別に私も否定しなかったからそうなったんだけど。まぁ大人の世界には色々あるのだ……。

というか私が関わってない悪事も大体全部私のせいにされてたし。おい都合のいいゴミ箱みたいに罪状を投げ込むなプロメアで燃やすぞ。あ、これブラックジョークですわはは。
もうほんと嫌ね〜〜〜私が優しいからってちょろちょろしやがってもう本編も終わりだしいいかって放っておいたほど潰しておけばよかった。物理的に。
まぁそんなこんなで死罪を告げられた私なのだが、勿論そのままはいそうですかとはいかない。

っていうか三十数年も頑張ったんだからもう自由になっていいよね〜〜〜〜！！！って話ですよ！！
どんだけ頑張ったと思ってんだ！！　研究とか研究とか政治戦略とか外交とか子育てとか子育てとか！！
子育てはな！！！　大変なんだよ！！！　わかるか！！！？？？
研究しながら伝手を広げながら子育ては！！！　大変なの！！！！　こちとら夫も妻もいねぇんだ！　私がガロの母親でもあり父親でもあり兄でもあるんや！　正直あの時期は死ぬかと思った。
まぁあの時期のお陰であの筋肉があるんだけど。もう筋肉を増量させないとやってられなかったからね。ガロのおかげで私は心身ともに鍛えられたと思ってる。ありがとうガロ……。

話が逸れた。
つまり死罪が宣告されてから私は早速行動を始めた。
そもそも誰がこの都市をつくったと思ってるんだという話である。監獄の人材も私が厳選したんだぞ。
根回ししてカメラにも映らぬようにフォーサイト財団の製薬会社から物を持ってこさせた。それは私がちょっとしたいたずら心で司政官時代にストレスでぶち切れそうになりながら作った叡智の結晶！　人体構造変形剤〜〜〜〜！
いやまさかこんな恐ろしい物ができるとは思っていなかった……。いやちょうどテロリストが使ったという人間をワニに変えるという薬物が裏ルートで手に入ったのでちょちょいとすればほらできあがりって感じで……。
で、それからはさささっと監獄の外へ出て薬を打ち込んで前世の姿に似せた女性になって現在なわけである。
このことを知るものは誰もいない……。監獄からの脱出を手伝ってくれた看守でさえも私がそのまま逃げて行ったと思っているだろう。薬の効果は知らないだろうからな……っていうかこれマジで暇つぶしに作っただけだから誰にも言ってないし……。

そんなわけで私は死なずにこうして再び娑婆の空気を吸っているというわけだ。いやぁ〜〜〜娑婆の空気はうめぇなぁ〜〜〜〜！！
ずごごごごごとたまったタピオカを全て飲み干してカップを近くに会ったゴミ箱に投げ入れる。
今の服装は白と青のワンピースである。黒髪が映えていい感じだ。元の身体の金髪も好きだったが、やはり日本人ならこれだろう。というかこの世界は色鮮やかな髪色が多すぎる。ルチア君のアイスクリームみたいな髪色はなんなんだあれ。

飛び上がるように立ち上がれば、ワンピースのスカートと左腕の裾がひらりと揺れる。
流石に人体構造変形剤といっても、身体の再生が主目的ではないので腕までは生やせなかったが、まぁこれはこれでいい。欠損系は好きだぞ。

死刑囚が逃げ出したというニュースは沽券に関わるのか一切報道されていない。
恐らく秘密裏に探しているのだろう。くく、姿かたちどころか性別さえ変わっていると知らないでいい気味だ！
ま、せいぜい頑張り給えよってところだバーカカーバ！

世間的には死んだことになって、ようやく本当の自由を手に入れた気分だ。
誰も私のことを知らない。世界も平和。クレイ・フォーサイトではなくただの生江として振舞える。

「あ〜〜〜〜〜！　なんっって清々しいんだろう！！」

右手を挙げて飛び上がれば、近くで見ていたおじさんに「元気がいいねー！」と声を掛けられる。それに手を振って応えてから、腰に手を当てた。

「じゃあ、いっちょ自由に生きますか！」