本編後、全てが面倒になり怠惰の化身になったクレイ成り代わり主を献身的に介護()してくれるガロ


どうも、クレイ・フォーサイトです。頑張った結果地球が消火されました。やったね。
この三十数年間頑張りました。というかよく私がやれましたねって感じでした。
だって司政官だよ？　だって国家都市だよ？　意味わからんね。この身体が優秀じゃなかったらとっくの昔にめげてくじけてたよ。でも頭はとっても優秀だったし体力はたくさんあったし、どうにかプロメアも抑え込められたので頑張るしかなくなりました。
人殺しは嫌だからそこでも更に頑張らなくちゃいけなかったし、もう思い出すだけでも嫌……人は睡眠をとらないと死ぬんだよ……そんなこと身をもって知りたくなかったよ……どうにか生きてるけどさ。

そんなわけで消火後は何もしないと誓っていたので、何もしませんでした。
牢屋に入れられて色々聞かれても何も答えなかったし（そしたら変な注射をされた、人権侵害だ〜〜〜）身体を動かすのも嫌で食事もしなかったし（そしたら点滴を無理やりさせられた。別にいらんそんなん）本当に何もしなかった。そしてそれがとっても最高だった。
ああ、何もしないって最高。素敵。幸せ……。

でもあの子が来るとそれが出来なくなる。
旦那旦那と懐いてきていた子供。今は青年となり、地球を救った英雄。
しかし私を心配して牢屋にやってくるガロに、さすがに完全無視はできなかった。いや若干無視はしてたけど。

「クレイ、なんで何もしゃべらねぇんだよ。そんなんじゃいつまで経っても出れねぇじゃねぇか」
「……出るつもりはない」
「っ、なら飯はせめて食えよ！　腕、そんな跡残して……」
「……面倒」
「〜〜〜〜ッ、クレイ！」

喋ってるだけいいと思ってほしい……。
喋るのも面倒なのに。
でもガロだから、ガロは悪くないし世界救ってるし、色々迷惑かけたから……。
いやでもこれで精いっぱいなんだよ、これ以上私の幸せを奪わないでくれ……。

そんな感じで我ながら酷い対応をしていたら、ついこないだこんな命令が下された。

『ガロ・ティモスを監視役として、共に暮らすこと』

この時ばかりは抵抗した。
嫌だ！！絶対に嫌だ！！　そしたら動かなくちゃいけないじゃないか！　喋らないままだったらガロが悲しい顔するじゃないか！　嫌だ！面倒！！　なんでや！！
どうにか話を聞けば（久しぶりにあんなに喋ったので呂律が回らなかった）、私が何に対しても反応をしないがガロに対してだけは反応を返すので牢屋に入れたままよりガロと共に居させた方がよい、と判断したと告げられた。

なんだそれ！！！！　確かにそうだけど！！　そんなことされるぐらいだったらガロ以外の人間に対しても返事ぐらいはするようにするから！！！

しかし私の必死の主張も通じず、次の日にはガロが牢屋に迎えにきていた。
ここに楽園はないのですか……。

ガロに無理やり牢屋から連れ出され、政府管轄らしいアパートにぶち込まれた。
一応大罪人のはずなのに特に拘束されるわけでもなく、好きに過ごしていいと言われた。
くそ、手かせとかあればそれを理由に一ミリたりとも動かないこともできたのに……。

「あんたの面倒は俺が見るからな！」
「やめてくれ……」

今まで形だけだった憎悪がしっかりと意味を持ったようだった。ガロお前は本当に忌々しい男だよ……ほっておいて……一人にしてくれ……泣くぞ……。
それからガロは宣言通りに私の世話を焼いた。
食事も面倒だし、勿論風呂も嫌だし着替えだってしたくないし目だって開けたくないのに、ガロは私の口にスプーン突っ込むし、風呂に引きずって身体洗うし、着替えまでするし、無理やり目を開けさせるから本当にというか最後のいらないだろやめろ。

なんだその甲斐甲斐しさ……介護職の方ですか……あ、レスキュー隊でしたか……なるほど……。
暫くそんな生活をしていて私は気付いてしまった。
これ、私が何もしないとガロがガチで甲斐甲斐しくしてきて逆に嫌だ。
あまりにも世話を焼いてくるのだ。しかもその時に口うるさく色々言ってくるし、なんなら世間話とかしてくるし。そうすると私も相槌を打たなければならない。辛い。

特に食事の際にスプーン突っ込まれた後に噛まないでいると顎を掴んで無理やり動かしてくるの、あれはだめだ。口の中無理やり動かされるの不愉快すぎて死ぬ。

「クレイ、夕飯だぞ！」

ああ、また嫌な時間がやって来た。
何をどういっても食べさせようとするから、意味はないのはわかりきっているが、それでも食べたくないと意思を発する。

「無理……食べるのが面倒だ……」
「またか〜？ほら、食べさせてやるから」

手慣れた手つきでソファにぐだぁと身体を預ける私を背負って、歩き出すガロに青い髪を見ながら思う。

「……ガロ……お前、暇なのか？」
「あんたの面倒で手一杯だよ」

……はぁ。とりあえず、今日は自分で食べよう。面倒だけど。