- ナノ -

暖かさに溶かされる1.5

「にしても、どうしてわざわざ自ら監視役なんて引き受けたんだ? 減刑や他の手段ならこんなに時間はかからなかったろう」

ガロとリオが大罪人クレイ・フォーサイトを監視することを条件に彼の仮釈放が決定され、本人にもそれが伝えられた。反抗するかとリオは思っていたが、本人も長い牢屋生活が耐えたのか複雑な表情をしつつもそれを承諾――あれが承諾というのならの話だが――していた。
ガロは自分たちが仮釈放先の家に連れて行く! と意気込んだが、さすがにそれは許されずクレイは別の護送車で運ばれることとなった。

クレイの牢屋にあった僅かな私物――私物と言っていいのか分からないが――を車に積みながら、リオはガロに尋ねた。リオは今まで、ガロのすることに出来るだけ協力してきた。クレイ・フォーサイトを憎む気持ちは変わらないが、ガロの話やクレイの周囲の人々の話を聞くうちに、リオの知らない面が見えてきたのは確かだ。だからこそ、憎むだけではなくクレイ・フォーサイトを知らなければならないと思っていた。理解できる立場になったのに、理解を拒むのは罪だ。
だからこそガロに協力してきた。だが、クレイ・フォーサイトを自由にしたいのならば、もっとやりようがあったはずだ。それだけが疑問だった。

ガロは後部座席に段ボールを積み込んだ後に、助手席に座っていたリオに向けて笑って言った。

「あの人はな、寂しがり屋なんだよ」
「さみ……は?」
「はは、まぁそうなるよな」

後部座席の扉をバタンとしめて、ガロが運転席へと乗り込む。
その顔は生き生きとしていて、鼻歌でも歌いだしそうだ。
そりゃあ、この日をずっと待ち望んでいたのだからそれもそうだろうとはリオは思った。だが、恐らくそれだけではないのだろう。震える右手でガロを抱きしめた男を思い出す。

「可愛いんだ、案外さ」
「……大丈夫か?」
「頭の心配すんじゃねぇよ!」

髪を振り乱しながらそう叫び、ったくよ、と車のエンジンをかける。
行き先はクレイ・フォーサイトの仮釈放先の家だ。そこにはガロが好きにしろと言われた、今までのクレイへのガロからのプレゼントもしっかり置いてある。
車の速度を徐々に上げながら、ガロは照れたように言う。

「一人にゃ出来ねぇし、一緒に居たいんだ」

今までガロがクレイ・フォーサイトの話をするとき、どこか気づかわし気だったし、不安そうな顔をしていた。その理由がなんとなく分かって、しかし少し半信半疑ながらも、リオは小さなため息とともに柔らかい笑みを浮かべた。

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bkm