どうも。生江と言います。
交通事故で死んだと思ったら生まれ変わっておりました。しかも中国、さらに言ってしまえば中国という名になるかなーり前。漢と呼ばれていた頃のようです。三国時代とかですからね、もちろんゲームもパソコンもテレビも漫画も、言ってしまえば紙さえありません。もうなんだ私に死ねというのか!
赤子時代は病みましたが、まぁ黒歴史ですわ。今はなんだかんだで生き残るのに必死です。一応これでも長男なので家を継ぐために日々勉強ですよ。ほんと世知辛いね。
まぁ普通の民とかだと農業頑張って領主にぶんどられて盗賊に襲われてとかが普通みたいなのでそれに比べたらイージーですけどね!でも出来れば現代に生まれたかった。なぜに過去へ戻ってきた。
とりあえず自分が生きやすいように現代で使える技術で治療したり紙やら作ってたら神童とか言われるようになっておりました。勘弁して照れるから。あと面倒ごとに巻き込まれたくない。だってあれでしょ? 今の時代とか徐々に戦乱が起こってくる感じでしょ? ホント勘弁してください人の生き死にとか無理です。グロ系無理なんで。
ということて、私の話や技術に関しては家の中だけで外には出さないようにしてもらっている。別に金に困ってる訳でもないし、地位が欲しい訳でもないからこれでいいのだ。でも神童って言ってくる周囲。たしかに同年代と比べると秀でてはいますけどそれ今だけなんで。
しかし、その周囲の中で一等尊敬してくる子がいる。まぁ、仕方ないといえば仕方ないのだが。
「兄様! 兄様は素晴らしいお方です!」
「吉利、あまり褒めるな」
「いいえ! 兄様を讃えずに誰を讃えるというのです!」
「お前はいちいち大げさだ」
まぁ、幼い頃は年上の兄は立派に見えるよねっていう。弟の戯言だからそこまで注意することでもないけど。
そう、ちょうど今自分の作った紙に妄想という名の小説を綴っている私の隣で目を輝かせながらそれを見つめていた我が弟の吉利。彼は私を尊敬してくれているとかで、私の後ろにいつも付いてきて教えを乞うてくる。
一応私も兄なので、そんなに懐かれたら悪い気もしない。分かることは教えてやり、分からないところは誤魔化してなんとなく教えてやっている。間違ってたら後で修正するので良いのだ。
「兄様、これはなんなのですか?」
「ん? ああ、車か。馬よりも早く走り、大人数を運べるものだ。馬よりも長く走れる」
「素晴らしいですね! これは兄様は作らないのですか?」
「今の技術だと作れないな。完成できるころには私達は死んでいる」
「そうなのですか……」
小説の中に出てきた車に興味を持ったらしい。だがこれは何百年も先の技術だし、私はそもそも理屈を知らないから無理だ。
無理だと告げれば顔を俯かせる吉利。落ち込ませてしまったのだろうか。何か言ってご機嫌を取ろうかと思った時に、ぱっと顔を上げた。
「兄様はそんな先の技術も予測できるのですね!」
あ、違った。さらに目を輝かせ始めた吉利に少し頬が緩んで、頭を撫でた。
「実現出来なければ同じだ。ただ、」
「ただ?」
「……お前はいい子だな」
「ほ、本当ですか兄様!」
「ああ、そのままのお前でいろ」
「はい!」
愛らしく笑う弟に胸が暖かくなる。なぜだか私は神童と言われはすれど、人があまり近寄ってこないので弟には結構救われている。たぶん嫌われてるんだと思う。そりゃあ気味悪いよな、こんな意味不明な知識ばっかり持ってる子供なんて。だからこそ、吉利がいてくれて良かったと思う。
できるなら、私が寂しくなるからこのまま変わらずに大きくなってくれよ、吉利。
……という弟しか知らないのだ。
だから、だから思いもつかないだろう。
「迎えに参りました、兄様」
「……まじかぁ……」
可愛い弟が、曹操なんてさァ!!!