- ナノ -

普通の人になります(BBB・ザップ成り代わり)
netaのをちょっと弄って




「迷惑なんですよ! 普通の人になって欲しいんです!!」

レオから言われた言葉に、暫し茫然とした。
うざいだの屑だのは言われ慣れていたが、迷惑とは初めて言われた。
迷惑――だったのだろうか。

俺はザップ・レンフロ。血界戦線という漫画でレギュラーキャラだったSS先輩ともクソ猿とも呼ばれている中々屑なキャラクターである。それが俺。でももしもの時は頼りになるし、意外と兄貴肌だし、天才なキャラでもある。
気付いたらそんなキャラになっていたわけで、原作通り師匠にしこたましばかれたわけで、そうしてライブラのメンバーにもなっていた。
そこで俺が何をしたかというと“屑”になることをした。
原作でのザップ・レンフロは屑であったから、それらしく振る舞うことにした。で、そこに元来持っている欲を少々。簡単に言うと男性陣へのセクハラが追加された。ぶっちゃけ俺のザップ・レンフロは男女どっちもいける設定である。実際に抱いたことがあるのは女性だけだが。現在6股中。そろそろ腹を刺される頃合いである。
旦那を殺す気で襲うだけではなく、他のメンバーがいる前で殺気をなくして普通に話しかける感じで胸揉んだり、寝ているレオの服を引っぺがしてみたり、ツェッドの葛餅肌を蹂躙してみたり。スティーブンさんにも仕掛けてみたりしてるが、大体スルーされるか氷漬けにされる。まったく困ったもんだぜ! ギルベルトさんは除外。鉄壁だった。でも機会があれば、とも思う。

そんなわけで、原作の屑に変態も追加されている現在の俺であるが、まさか迷惑と言われるとは。
今は丁度、昔に4股を掛けていた女性二人とかち合わせて修羅場に突入しかけていたところである。
そこに丁度いたレオも巻き込まれて――という、ある意味よくある場面なのだが、修羅場の女性がちょっとした勘違いをした。
レオも愛人とか恋人とか、そういうのかと思ったのだ。
うーむ、一応男も大丈夫。とかは女性には言っていないのだが、もしかしたら雰囲気で漏れるのかもしれない。女性は鋭いものである。が、実際問題男と身体関係を持ったことも恋愛関係を持ったことも(今のところ)ないので、ある意味でその勘は外れている。

しかし、勘違いされたレオは堪ったものではなかったらしい。その怒りが、当たり前だが俺に来た。
それで、最初の台詞である。
しかし、そうか。迷惑か。

「……じゃあ、普通の人になるか」
「えっ」

俺の発言にレオが呆けた声を出す。
だから、普通の人になるっつってんだろ。お前の望み通り。
流石に、迷惑と言われたのは初めてだったのだ。うざいとか嫌いだとか、屑だとかならいいのだが(いや良くないが)迷惑となると、話が違ってくる。
なんだかんだと言って仲間として見てくれているのは知っているし、怒りつつも認めてくれているのも知っている。だが、迷惑というのは傍にいるのが真剣に辛いということだ。だからこそ、初めて聞いた言葉でもあった気がする。
いつも通り、ツッコミと一緒に怒るならまだ大丈夫だと思えたのだが、そろそろ潮時のようだ。
確かに、俺も原作が屑だからとはっちゃけ過ぎた自覚もあるし、そろそろ普通の人になってもいいかもしれない。欲望を抑える時が来たわけだ。

因みに、未だ女性二人は修羅場中である。



「で、作戦は以上だが……おい、ザップ」
「なんすか?」
「……お前、大丈夫なのか?」
「はぁ、大丈夫っすけど。どうしたんすかスティーブンさん」

配られた資料を見ていたらスティーブンさんに心配された。
何故だと思うのが普通なので問い返してみたが、理由は分かってる。理由が理由なので、スティーブンさんは問い返された言葉に何も言えずに訝しげな顔をする。
今はこれから行う作戦の説明をスティーブンさんが行っていた。分かりやすく丁寧で、そして合理的な作戦である。何度でも思うがこの人は本当に頭がいい。
配られた資料もよくまとめられていて、今まで流し読みしていたのが申し訳なくなる。
そう、これが理由である。俺は今、資料を熟読とまではいかずともしっかりと読んでいた。それだけだ。

「何か変な物でも食べたんですか」
「なんだよ。なんも食べてねぇよ」

寧ろ薬(ヤク)も止めるのだ。これから健康体になっていく予定だ。
今までは屑であるし、本気で危ない物を見極めるという意味でも積極的に吸って、ヤバい物の場合は販売元を潰していたりしたが、これからは本格的に吸うのではなく情報を集めたりして潰せばよくなったので、自分で使う必要はない。
寧ろ、今まで薬に使用していたお金を普通の食事に使えるのだから、楽しみが増える。
ツェッドが大人しく口を閉じる。しかし何か言いたいことがあるような目線を向けてくる。そこで、そういえばいつもはここで俺が葛餅でも食ったかねぇ、あっ、てめぇのことじゃねぇぞ。てめぇを喰ったら腹ぶっ壊れるしな〜とか言って喧嘩が始めるところだ。なるほど、その軽口がないから戸惑っているのか。

「クソ猿が大人しいなんて、天変地異の前触れかしら」
「いだだだだだっ! 肩に乗るんじゃねぇ!」

チェインがどこからともなく表れて、肩に乗っかる。
全体重でないことは分かるが、それでも肩が脱臼する。ホントにやばい。
ぴょん、と跳ねて地面に着地したチェインを眺めつつ、肩を擦る。ホント痛い。
俺が肩を擦って、いてぇーとか言っていると、ライブラのリーダーが心配げにこちらを見てきた。

「ザップ」
「なんすか旦那」
「何かショックな出来事でもあったのかね。私でよければ相談に……」
「いや、ねぇっすから」

顔の前で手を振って何もないとアピールする。にしても旦那ほんと優しいな。
こんな人に変態全開だったのか……そう思うと色々申し訳なくなってくる。後で謝るのもいいかもしれない。
ただ、今は訝しがる皆に言って行かなければならないだろう。

「色々変だなーって思ってるかもしんねぇっすけど。俺、普通の人になるんで」
「は?」
「普通ですって?」
「アンタが?」
「どういうことだろうか」

それぞれ信じられない――若干一名ハテナを浮かべる大男がいるが、まぁそれは置いておいて――そんな顔をするメンバーを見つつ、宣言する。

「俺、屑卒業します」

あと、変態も。
そういえば唖然とした顔が並んで、一人、天パのもじゃげが戸惑った風に俺を見た。
それがどうにも子供っぽく見えたので、頭を軽く撫でてみた。

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bkm