- ナノ -

4……え、それ……えっ。


それから色々ありとりあえずは国籍は日本のままで中国留学という形に落ち着いた。諸々の手続きが面倒すぎたともいう。
あと、孫権から(さんは取ってくれと懇願された)孫家に紹介されて、父であるらしい孫堅さんや兄であるらしい孫策さん、妹であるらしい孫尚香さんにも暖かく迎えられたのだが正直他人感が拭えないし、孫家の人々もそんな感じだった。いや、暖かいしようこそ!って感じなんだけど距離を図りかねてるっていうか。私が距離を取りたがるから余計である。
実家に住めばいいと言われたが、流石に遠慮させていただいて学生寮に住んでいる。
中国語は孫権に教えてもらったりして、日常会話ならたぶんおそらく完璧だ。というかそうであって欲しい。

あ、それからDNA鑑定で完全に孫家の人間だと判明したそうだ。マジか。ここまで来てもただ見た目が似てるだけなんじゃないかと思ってたわ。

そんな中で驚いたというかある意味で予想通りだったのが、他の三国時代からの転生者もいたということだった。孫家の人々は皆そうだったし、呉の家臣達も孫堅さんの企業とか関連企業とかご近所にいるようで、その人達も覚えているとのことだった。
だからこそ私の扱いが微妙だったとも言える。昔からの知り合いで構成されているのに、そこにぽっと出の私がいるのだ。孫権は二重人格だと主張しているが、つまり私は過去に目に見える形で存在していなかったわけだ(そもそも記憶が無いのでそれも本当が定かではないが)、ならそりゃあこいつ誰だとなるもんだろう。

それから孫権には二重人格云々の話はしないように口止めをしてもらっている。何故って……私だって覚えないのにそんなのと言われて話振られたら堪らないからだ。
その時孫権は少しさみしそうな顔をして、分かっている。と答えた。なんで寂しそうな顔をしたのやら、なんとなく罪悪感を覚えるからやめてくれ……。

それから、呉以外の人物の転生者もいるようで。目立つのが曹操と劉備だ。君主となると目立つのが宿命なのか、曹操は大企業の社長、劉備は有名な生徒を出している学園の学園長だった。
もちろん孫堅さんも目立っているだが、あとから知ったが結構会社が危なかったらしい。立て直しをしていたらしいが、私が諸々準備を終えて中国へやってきた時にはゴタゴタは終わっていた。知らずのうちにやばい事態になってたの笑えない。
まぁ今や曹操の企業に肩を並べる大企業なのだから、こちらもこちらで凄いものだ。

そんな訳でお金の心配がなくなった私は思う存分勉学に励んでいた。同じ大学に通う孫権と基本的に行動しているが、孫権に付き従うようにいる周泰さんとも仲良く……たぶん仲良くなったり、孫権の友達である甘寧や凌統、陸遜とも関わったり、孫堅さんや孫策さん、孫尚香さんといった孫家に構われたり、呉の人達を孫権から紹介されてギクシャクしながら話をしたりと、まぁ何だかんだと退屈しない、ある意味で騒がしい日々になったのだが……。

ある日、孫堅さんが会議に呼ばれたとかなんとかで、何故か孫権や私も呼ばれとある企業へとやってきた。
しかしそれが曹操の企業なのだからビビる。いや、なんというか私は全く関係ない(覚えがないので)のだが、孫堅さんや孫権は違うじゃないか。大丈夫? 喧嘩になったり血がふきだしない???
そしていざその会議室に足を運んでみれば、中国一有名な学園長と言ってもいい劉備がいた。
おいおいおいおいやばいやばいやばい、これ三国の君主集結してるやんけよ。しかも曹操と劉備それぞれお供というか、絶対ボディーガードだろうっていう夏侯惇と関羽おるんですけど。
やばい正直三国無双ファンとしてはめちゃくちゃ感動なんだけどなぜか当事者になってるから冷や汗が止まらない。
しかも、しかもね……あれなのよね……劉備は三国を統一した時に一緒に協力してくれたけど……その……曹操は……あの、イデオロギーが対立してて孫権が殺したようなもんだったはず……歴史書では……。
もうこれ正気有の辛い!

「懐かしき面々だな。わしらがまた揃うこととなるとは」
「ああ、だが無駄話をするために呼んだわけでもあるまい」
「この中華は既に一つだ。穏便な話し合いであろう」
「ははは、劉備の言う通りだ……。何も戦の話や過去の因縁の話をしに来たのではない。ただ、大きく関連するのは確かだ」

椅子に座り、堂々と話す三者に正直ビビりまくる。孫権の隣に座らせてもらっているが、ほんと私蚊帳の外過ぎるので帰っていいと思う。

私たちを会議に呼んだ張本人である曹操は、顔に笑みさえ讃えて言った。

「三国の転生者を役者とした、三国の映画を作ろうかと思うてな」

……え、それ……えっ。



話を聞けば、昨今の三国志の人気にあやかろうというわけらしかった。曹操の企業の一大プロジェクトととして売り出し、様々な展開をしていく予定とのこと。
イヤイヤおいおい、と思ったが何故かそれに孫親子が食いついた。ならば我らも一枚噛ませろと乗る気満々だ。劉備は渋っていたが協力費として学園に資金提供をすると曹操が申し出ると資金難らしかった劉備は、勉学に支障が出ない程度ならとOKを出していた。おい出していいのか。
そんなこんなで話は進み、いつの間にやらできる限りのものはできるように交渉し、三部作で映画を作ろうという話になった。
うおーーーい!!すげぇな!!!話がコロコロ進むぞ!!これが経営者たちの会話か!!

えんやえんやと話は弾み、結局最初は三部作の予定だったのに結果的に番外編を含めず7部作で落ち着いた。
お、おい……7って……めちゃくゃシリーズ映画じゃねぇか……。
そして曹操の企業が先導し、企画作成やら人集めやらを行い、1ヶ月後には関係者を集めて会議をすることとなった。
うおーーーいはやーーーい!

「にしてもみんなが役者か……すごいね、何はともあれ絶対見に行くわ」
「何を言っているんだ? お前も出るんだぞ」
「……は?」

トントン拍子で話が進み、うわーすごーいスケールがちがーうとただただ話を聞いていただけなのにいつの間にかそこに組み込まれていた嘘だろぉ。

「い、いやいや! 出る機会ないよね!? 二重人格は出る機会ないよね!?」
「影武者という形で脚本に組み込んでおいたぞ」
「ファーーーーー」

お前ほんとまじ……えっ、嘘じゃないの!?