- ナノ -

3おいそれ中国で有名な大企業じゃねぇか。前向きどころじゃなくて即決だわ。


話を聞いた結論から言わせてもらえば、突拍子が無さすぎる。という話だろうか。

『つまり……あなたと私は双子に生まれていたけど、私の方だけ赤子の時に拐われてそのまま帰ってこなくて日本でそれらを知らずにすごしていたと』
『そうだ!』

めっちゃくちゃ自信満々だなぁ。
もうこの時点で韓国ドラマか何かかな?という話なのだが、ここからがやばい。たぶん私以外が聞いていたら精神病院に連れ込むレベルでやばい。

『えーーーと? しかもあなたは三国時代で生きていた孫権の生まれ変わりで、私はその……孫権の二重人格的な存在……だっけ?』
『ああ、そうだぞ!』

いやぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜そんな自信満々に言われてもなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜
その、彼が孫権の生まれ変わりというのはある意味すんなりと納得はできた。つまりこの世界は三国無双のゲームの、未来の世界というわけだ。前世とは違うのだ。それは三国志の歴史が前世で覚えていたのとは違うことからも理解できる。
だが……いや〜〜〜〜〜〜〜〜〜私が孫権の二重人格か〜〜〜〜〜〜〜そういう前世の記憶はないんだけどなぁ〜〜〜〜〜〜〜

『あ〜〜〜〜〜〜まぁ、でも、私は覚えていないので……』
『そうか……覚えていないのか……』

孫仲謀さんもとい、孫権さんはあからさまにしょぼんとしてしまった。
ああ〜〜〜〜〜しょぼんってしないで〜〜〜〜〜なんか可愛いし罪悪感〜ってなるからしょぼんってしないで〜〜〜〜〜
しかし、孫権と二重人格ねぇ、どうにも覚えていない。ゲームでもそんな記述はなかったし、見た目や境遇から孫権が作り出したイマジナリーフレンドではなかろうか。そんなことは流石に言えないが。

『だが、お前が私の双子の兄弟というのは本当だ! なんならDNA検査をしてもいい!』
『え、ええ……いや、いいよ……』
『何故だ!? 父上に会いたくないのか!?』
『いや、なんというか、今更子供です〜って出ていっても気まずくないですか?』
『そんなことはない! 父上もお前に会いたがっている! 自分の子供が攫われたのだ、心配しない親がどこにいる』

まぁ、確かに。ゲームでも子煩悩な孫堅のことだから当然心配はしているだろう。
しかし、しかしなぁ、どんな顔して会えばいいんだか。

『それに今はどうしているんだ? 保護者は?』
『孤児院で育って、今は奨学金とバイトでどうにかしてますよ』
『なら、中国に住めばいい! 大学も編入して、父上に申し出れば金銭の問題もなくなるだろう』
『えっ、それいいの? そんなポンポンお金出してくれるの?』
『当たり前だ』

ちょっと、いやかなり魅力的な話だ。お金を出してくれるのは、本当に有難い。これでも苦学生なのだ。将来を考えると、お金の心配をせずに中国でしっかりと勉強した方が得だ。
ちょっと考えて、孫権さんに孫堅さんがなんの職業についているか聞いた。

『〇〇会社の社長だが』
『ぜひ前向きに検討させていただきます』

おいそれ中国で有名な大企業じゃねぇか。前向きどころじゃなくて即決だわ。