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1私は常々、自分が生粋の日本人であると思っていたが実はそうではなかったらしい。


私は常々、自分が生粋の日本人であると思っていたが実はそうではなかったらしい。
私は孤児院育ちの大学生で、前世の記憶というものある。それは今と同じような現代日本で平穏無事に暮らしていた記憶である。しかし今と同じような年齢になった時、その記憶がプツリと切れる。おそらく死んだのだろうと思う。
そんな幸せな前世があったので環境が悪くてもグレずに真面目に生きることが出来たのだと思う。
そして今は奨学金とバイト代で食いつなぎながらどうにか大学生生活を満喫している。何だかんだと息のあう友人もでき、大学まで通えているのだからなかなかいい生活ではないだろうか。奨学金が後で怖いが。
それから、見た目の特徴として私の髪は赤褐色だ。珍しい色で、昔はこれが原因でイチャモンを付けられたりしたか赤毛のアンを例に出したら皆黙った。ちょっと内容知っていたら自分がしていることが理解できただろう。
あと、若干顔の堀が深い。身長も、女にしては高い。それから、今はカラコンで隠しているが碧眼だが、それは日本人でも稀にあることでやはり私は前世の記憶もあるので自分が日本人であると疑っていなかった。隔世遺伝か何かと思っていた。
それが崩されたのは大学2年生の頃。中国からの交換留学生がやってきた時だった。
というか、これが原因で私のちょっとハードな平穏無事な日本生活がオジャンになったのだが。

私は前世のオタク趣味のおかげで多言語に興味を持っていたので、大学の中国語講義を受けていた。結構レベルが高かったが、前世の記憶のおかげか勉強を今までちゃんとやっていたおかげかあまり苦に感じることなく学ぶことが出来ていた。
そんな中で、中国からの留学生を講義中に紹介された。まぁ、中国語講義なのだから、紹介もするのだろう、とぼうっと眺めていたら衝撃を受けた。

「ハジメマシテ、孫仲謀と、いいマス」

拙い、ある意味で可愛らしい日本語を扱いながら広い大講義室の前で自己紹介をしたのは赤褐色の髪色に、彫りの深い顔、遠目からでもわかる碧眼。私と同じだ……いいや、違う。注目する点はそこではなく。

「孫権……!?」

確かにその姿は、現代服であるという相違点はあったものの、前世の三国無双というゲームの中で見た呉の君主、孫権の姿だった。しかも名前も字であるだけで、完全に孫権だ。
思わず呟いた言葉に、まさか聞こえているはずがないのに、気配でも察したのかその孫仲謀とやらがこちらに目を向けた。
その瞬間に、目を大きく見開いて、その場から走り出した。

「え、孫さん!?」

驚く教授やザワつく学生をよそに、勢いよく階段を登った孫仲謀は、そのまま……大講義室の一番後ろに陣取っていた私の元へとやってきた。
息を切らせて、睨みつけるように私を見る表情に思わず引く。が、次の瞬間、まるで何か憑き物が落ちたかのように笑みが現れた。

『やっと、見つけた!』
「え、」

えっと、いったい何がでしょうか。

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