- ナノ -

違えた『約束』を貴方に

page.14 6−2

基本的には料理は私がする。だから兄は料理が出来ない。
でも、そうはいってもインスタントラーメンぐらいはできる――そう思っていた時期が私にもありました。
結論から言うと、カップラーメンにすればよかった。である。だってあれお湯入れるだけだもの。

「あちぃ」

手にやけどを負った兄に、呆れながらそこまで心配はしないでいる。
片手の手錠を外して作らせたから、実質片手しか使えなかったという点もあるだろうが、ラーメンの汁は半分以上なくなって、卵は殻が入り、麺は伸びきっていた。
なんとなく温度のない目でそれを見つつ、近くにあったバナナを取って部屋に戻るように指示する。

部屋に戻れば、椅子を机にしてラーメンは兄に自分で食べてもらう。片手だけど。流石に麺類を食べさせてあげられる元気はなかった。
とても嫌な気分で食べている兄を見つめていれば、兄が当たり前のことを訪ねてくる。

「善子はラーメン食べねぇのか?」
「いらない、バナナ、食べる」

薬を水で飲み下した後に答えれば、その当たり前の発言にショックを受けたらしい兄が箸を手から滑り落ちさせた。行儀が悪い。

「た、食べてねぇのと一緒じゃねぇか! そんなんじゃ風邪も治んねぇぞ!」
「無理してたべて、またはくより、いい」
「それは……」

そーかもしんねぇけどよ……。と自信をなくして声を小さくする兄に小さく息を吐く。
それから水を置いてもぞりとベッドに戻った。

「あ、おい。バナナは」
「あとでたべる」

正直、バナナさえも食べる気力がわかない。
全身が痛いし、口を動かすのもおっくうだ。だから、兄との会話もこれまでだ。
薬も飲んだし、もう一度寝よう。薬を飲んだ後に何か胃にいれなければならなかったが、楽な方の道を選んでしまった。
ああ、ダメだなぁ。ほんと、私は。
だから、みんないなくなっちゃうんだよ。

なんとなく、涙が頬を伝った。
薬指に縋ろうとして、何もないことにまた涙が流れた。