- ナノ -
「うわーーッ!」

うわっ、なんだなんだ!?
間近で聞こえた叫び声型の目覚ましの音に、驚いて目を覚ます。
ガクンと身体が揺れて、ベッドから落ちる!? と身を固くすれば、何かに支えられる身体。よくわからないが、落ちないで済んだらしい。
と、ここで違和感。私はベッドで寝てなんかいなかったぞ。むしろ、さっきまで――さっきまで何してたっけ。ガロとお話していたような気がするし、燃え盛っていた気がするし、クレイと笑い合っていた気もする。
記憶がごっちゃになっているのに混乱しつつ、衝撃に瞑った目を開けば、見知った人物がいて笑みが浮かんだ。

「クレイ!」
「ッ、エマ、エマなの、か……」
「エマだよー!」

信じれないような目を向けてくるクレイに、私もよくわからないが元気に声を上げる。
なんだかよくわからないがテンションがマックスだぞ! よくわからないが!
どうやら私はクレイの膝の上で寝転んでいるらしい。流石クレイ、体格がいいから落ちないぞ。というか、落ちそうになったところをクレイが支えてくれたらしい。優しい!

クレイは白い服を着ていて、髪の毛が風にたなびいていた。どうやら随分髪が長くなったようだし、見た目も少し貫禄がある。と、ここまで来て脳内の片隅で『司政官だ』と囁く自分がいて、ん? となった。
あれ、司政官だ。でも服がボロボロだし、なんだか憑き物がとれたみたいな顔をしている。
……ん? これ、もしかして消火後か?
そこまで思いいたって、ようやく自分のことを思い出した。そうだ、私今までずっとクレイのプロメアになっていたんだ。それで、ガロとリオの完全燃焼ではしゃぎまわって……それから、夢を見たんだ。
それに気づいて、また思わずにっこりとしてしまった。そうか、なるほど!

「クレイが戻してくれたんだ!」
「は?」
「ありがとうクレイ! 戻ってこれた!」

私にはわかる! ということでクレイに全力でお礼を言う。
つまり、あの白昼夢は戻ってこれるかこれないかだったのだろう。あの夢の中でクレイが手を握ってくれたから自我が保てて元の姿に戻れたような気がする。気がするだけだけどたぶん合ってるだろう!
感覚でしかないが、長い間プロメアと同化していたからこそわかることもあるのだ。全部憶測だけど!
にしてもずっと生身に戻れなかったから怖かったけど、どうにか戻れて一安心だ。あのままプロメアと一緒にプロメアの惑星に行ってしまっていたらと考えるときつすぎる。いろんな意味でよかった!
ご都合主義かなんなのか服までちゃんとあるし、安心安心。

一人できゃっきゃとしていると、頬にクレイの右手が触れる。そうだ、左の義手は破壊されてないんだった。
大きな手はあの頃に比べて少しガサガサとしていて、肌にこすれる。でも、暖かくて思わず自分からすり寄ってしまった。と、あまりにも子供っぽいと気付いてはっとなる。
だが、クレイはそうは思わなかったのかなんなのか、親指で私の頬を撫でた。あんまりにも優しく触るものだから、くすぐったくて少し笑ってしまう。目を細めた後にクレイを見たら、ずっとこちらを見つめていて、そうだと口を開いた。

「ただいま、クレイ」

クレイは撫でる手を止めた後に、しばらくして、とても小さな声で「おかえり、エマ」と言ってくれた。