- ナノ -
そして月日は流れる。プロメアの一部となっているせいか、よくわかる。確かにこの星はもう終わりだ、プロメアは日々活性化していって、燃えたい燃えたいと燻っている。ともすれば何かの切っ掛けさえあれば噴火してしまうだろう。
そして、運命の日がやってきた。

いやもう、凄かった。映画でも見ていたが、凄い。ロボだし。滅殺開墾ビームだし、瞬砕パイルドライバーだし、絶対零度宇宙熱死砲だし。いやはや……あんなにはしゃいでるクレイ久しぶりに見た。今までずっと柔和な笑みとか寛容な雰囲気とかリーダーの風格とかしか見てこなかったから、なんというか……一緒に暮らしていたころを思い出した。あの頃はクレイも少しお茶目なところがあって、ロボットとか作ってきてガロにあげたりしてたもんなぁ。
ちょびっとほっこりしつつ、やばい時はあった。
そもそもプロメテックエンジン始動したときは同化しているプロメアが悲鳴をあげて辛かった。あと何よりも焦ったのがクレイがクレイザーX(ガロのネーミングセンスはある意味凄いと思う)の上でガロと対峙したときだろう。

その時に、過去の真実をクレイは語った。でも成り行きで世話しただけだって言われたときはちょっとむっとなった。いやいやあれ成り行きじゃないでしょ……。善意ではないとしても優しくしてくれたやんけ……。
それから、私のことも。まぁ、昔の火災がクレイの発作によるものってわかったら、じゃあ私が原因ではないってことになるよね。その時は今まで高かったテンションが下がったのが印象的だった。
「エマがバーニッシュであったのは偶然だった。だが、彼女が火災の原因であるとされれば都合がよかった」
そう語ったクレイに、もう文句を言いたくて仕方がなかった。なんだよ! 新聞記事をガロに見せなかったくせに!

で、言い終わるや否や、クレイはガロを燃やそうとした。

いやいやいやいやいやいや確かに計画は大事かもしれないねクレイ! でもね、殺すのは、殺すのはよくないよ!! その子殺したら世界鎮火しないからしないからぁ!
もうその時は必死だった。プロメアの力をどうにか抑え込んで――イメージ的には外に放出されるプロメアたちを綱引きの要領で引っ張っていた――リオの炎に負けさせようと必死だった。が、結局はガロはクレイザーXから船の甲板に落ちて行っちゃうし、リオの炎がガロの周囲を覆っていたから大丈夫だとは思いつつも白目を剥かざるを得なかった。

リオをコアにして再度パルナッソス計画――時空転移(ワープ)を行おうとした――を実行しようとしたときも焦りに焦った。なにしろ中身のプロメアが共鳴して叫び声をあげるのだ。精神が焼ききれるかと思った。
そしてワープが行われる直前、ガロがドリルで――ドリルで――突っ込んできてからも大変だった。クレイが親の仇と言わんばかりにガロを燃やそうとするのだ。いやガロにとって親の仇はクレイなんだけどさ! いやこの例えやめようか。

必死にやめろやめろー! と綱引きして、ガロのドリルの武器と装甲が溶けてしまってからは綱引きじゃだめだ! とガロを守るほうに回った。リオの炎があったためそれを強化するようにどうにかそちらと共鳴する。
上手く言っていたかは分からないが、本編通りガロが勇ましい足取りでクレイの元にたどり着いた時は、もう感動で泣きそうだった。安堵と弟の成長にだ。

「俺は助けるぜ、リオも、地球も、あんたもなぁ!」
「私を……?」

いけーーーー!殴っちゃれガローーーーー!

ガロの発言に、一瞬気を取られたクレイにガロの熱い拳が顔面に決まる。
ヒューーーーー!!!ガロカッコイイーーーー!!
と思ったら後頭部に二発目。その勢いに顔面から床に落とされるクレイ。お、おお、ま、まぁそうやな。二発ぐらいいいよね。うん。
にしてもクレイ、私をってなんだよ。ガロはね、天使なんだよ。いい子なの。両親がなくなったのは事故だったし、私が消えたのも私のせい。悪いことをやったのはガロにとっても許せないだろうけど、見捨てる理由にはならないよ。
……ガロがいい子に育ってよかった。ま、育てたのは私とクレイですけどね。

そのあと、ガロは灰になりかかっていたリオを、彼の炎を人工呼吸で身体に取り入れさせることで助けようとした。よっしいいぞ、私も手伝っちゃる!
リオの炎とは先ほど共鳴できていたので、そのまま人工呼吸に乗ってリオの身体に入り込む。そのあとはリオのプロメアに便乗する形で、身体を駆け巡って心臓を動かしたり、身体を再構築したり走り回った。
初めてのことだったので、これでいいのかと思いつつ様子を見てみればリオの身体は元に戻っていって、目を開く。やった! よかった! プロメア完!! いやまだ完じゃない!

そのあと、リオはプロメアと共鳴して得た知識から、彼らが不完全燃焼なのだとガロに告げる。そして完全燃焼するにはガロの火消し魂が必要なのだと二人でコアに乗り込んでいった。
リオが気合に上着を抜いたとき、ようやく気を失っていたクレイが起きる。
私もクレイとリオの中から外を観測できるようになり、両者の視点を得た。リオとガロの自信にあふれた表情と、クレイの焦燥した顔が見れ、なんだか笑みがこぼれた。

「貴様ら、何を!」
「決まってんだろ、火消しだよぉ。地球の炎とあんたの野望の炎のなぁ!」

きゃーーーーー!! ガローーーー!! かっこいいーーーー!!
その言葉を合図に、青い炎が吹き上がる。勿論私だって参加しますよ。だって私はバーニッシュだもの!
一度は呪ったバーニッシュの自分。でもここまで来たら完全燃焼しないと損でしょう!
青い炎にクレイの左腕が砕け散る。その瞬間に外に繰り出して全力で燃え上がる。プロメアたちの歓喜の声が聞こえてくる。今までの赤や黄色の炎ではなく、青いまるで洪水のような炎が船を沈め、世界を覆っていく。
巻き込まれていく人々、しかしガロの火消し魂に呼応した炎は危害を加えず、逆に守っている。思わず笑い声をあげながら、ガロデリオンなんて凄まじいものの一部となる。

ジェットコースターにでも乗ったみたいに叫び声をあげて、幾多の炎と共に地球を、太陽系まで燃やし尽くす。勢いしかもうないのに、どこまでも止まれず、どこまでも楽しかった。