ホワイトデーの真実

ずいぶん時間が経った。

あの時のことを、もう話してもいいだろう。


元姫に青の耳飾りを送ったのは何を隠そう、司馬師だった。

司馬師はバレンタインのお返しになにかプレゼントをしようと
事を起こしたのだった。

しかし、自分で何を選んでいいかわからなかった。
腹心である諸葛誕を連れて、街へ出かけることにした。

「司馬師殿、どのようなものをお送りになりたいのですか?」
「できれば・・・装飾品を・・・。」

「ん〜彼女に似合いそうな装飾品ですか。」
「////」

フラフラと歩いていると、諸葛誕は声をかけた。
「司馬師殿!あれはいかがですか!?」
「ん?」

そこに見つけたのが耳飾りだった。

透き通った青色が美しい。

「元姫があれを付けたら・・・さぞ・・・美しいだろうな。」
「司馬師殿、顔が赤いです。」
「これにする!」

即決と言わんばかりの速さで、司馬師はそれを買った。
綺麗に包装をしてもらうと、司馬師は満足そうであった。


「これならきっと喜ばれるでしょう。」
「しかし・・・これをどう渡せばいいのだ?」
「そうですね。司馬昭殿に見つかるとまた厄介。」
「諸葛誕、少し頼まれてくれぬか。」


その夜、司馬師は皆を集めて酒の席を開いた。
その頃、既に元姫は部屋で休んでいる。

諸葛誕が司馬昭を惹きつけている間に、
司馬師が元姫の部屋へ行き、贈り物を渡すという計画を立てた。


そして夜。
酒の席は大いに盛り上がる。
司馬昭はどんどん酒を飲んでいく。
諸葛誕はせっせと酌をしていくのだった。

隙を見て、司馬師は席を外れた。

向かうのは元姫の部屋。
贈り物をもって。

しかし、部屋に入るのに躊躇する司馬師。
右往左往していた。

「師よ、そこで何をしている。」
「!?」
振り返ると底には父の姿。
弟の次に見つかりたくない相手が現れたのだ。

「こんなところで何をしている。」
「あ・・・・いやぁ・・・そのぉ。」
「ん?その手に持っているものは何だ?」
「あ、これは・・・・。」

司馬師は小箱を背中に隠した。

「お、そうか。師よ、さてはそれは。」
嗚呼感づかれてしまったのかとショックを受ける師。

しかし、この父はどこまでも鈍感だった。。

「春華への贈り物だな。バレンタインのお返しか。お前もまだまだ子供よの。」
「へ?」

父は息子の手から小箱をひょいと取る。
「これは、私から春華に渡しておこう。きっと喜ぶだろう。」
「ああいやぁ・・そのぉ。」


父はそのまま去って行った。


泣きそうになる気持ちを抑えて、宴会場へと戻る師。

柱の陰から、諸葛誕を呼び寄せる。

「どうでしたか?」
「・・・・・父に取られた。」
「え?どうしてですか!?」
「何をどう考えたのか!母上への贈り物と勘違いされてしまったのだ。」
「なんと!」
「私は・・・・どうしたらいいのだ。」
今にも泣き崩れそうな司馬師をなんとかなだめる誕。

しかし、本当にどうしたらいいものか。

「とりあえず、明日春華様にお話をしてみましょう。
あの方ならわかってくれますよ。」
「そうか?」
「私も、ご助力いたします。今日はとにかく飲みましょう。」

「ああ。」


酒の席に戻る二人。
明らかにテンションの低い司馬師

「兄上、どこに行っていたんですか?しかもめちゃくちゃ落ち込んでるし。」

「何も聞かずに飲むがいい、ついでに私の肉まんも食べていいぞ。」
「え?ほんとですか!じゃ、いただきま〜す。」


宴は、司馬師を置いて盛り上がる。
諸葛誕は横目で司馬師の様子を伺い続けた。


「師元、ちょっといいかしら?」
そこに聞こえてきたのは母の声。

「母上。」


母に呼び出された師。
誕もその後ろを付いていく。


「これ、あなたのでしょ?」
渡されたのはさっきの小箱。

「旦那様、少し酔っていたのよ。
それに、私への贈り物を用意するのを忘れたからって、
息子から取り上げるなんてね。」

我が父ながら、なんとも悲しい。

「これは、ちゃんとあげたいひとにあげていらっしゃい。」
「母上・・・。」

女神のような母のおかげで、贈り物は無事に帰ってきた。

「司馬師殿、今度こそ!」
「ああ。」
「でもね子元、夜這いはダメよ。じゃあね。」

母は去って行った。

そして、師は再び元姫の元へ行こうとした。

「引き続き、司馬昭殿は私が飲ませておきます!」
誕は宴へと戻って行った。


「私は、なんて幸せ者なのだ・・・。」

そして
部屋に行くと、元姫は既に眠っていた。

「そうか・・・眠っているのか。」

司馬師は贈り物を枕元におき、スッと走って逃げてきた。

そして酒の席に合流

「あれ兄上、またどこに行っていたんですか?」
「ああ、ちょっとな。」

満足気な顔をしている司馬師
諸葛誕はスッと隣へ寄って行った。

「やりましたね。」
「ああ。眠っていたが、無事に渡すことが出来た。」
「眠っていた?」
「ああ。」
「司馬師殿!?」
「ん?」

今度は誕が師を連れて宴を出て行った。

「寝ていたんですか?」
「ああ、だから枕元に。」
「司馬師殿、手紙などは入れましたか?」
「いや。」
「それじゃ、誰からの贈り物かわからないじゃないですか。」
「・・・・・・・あ。」

そう、贈り物を置いたものの、
それが司馬師のモノとはわからなかった。」

「まずいか。」
「マズイですよ。司馬昭殿の目にも留まるでしょうし、
誰からの贈り物かわからないものを彼女が持っていると思いますか?」
「ああ、そうだな。どうしたらいい。」
「なぜそんなことを!?」


「理性が飛びそうだったんだ。」


あ、さっきの春華の言葉が残っていた。




「とりあえず・・・明日、様子を見てみましょう。」
「嗚呼。」


翌日、司馬師は部屋から一歩も出てこなかった。

翌日の出来事は元姫がそれを付けて城中を歩いた。
だれからの贈り物か調べるために。

彼女はしっかりと、師からの贈り物を付けていたということで
彼女を見かけた誕は、涙が止まらなかったという。


すれ違う二人の想い。

この結末は、誰も知らない。

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