井戸の願い

・・・宗茂・・・・。

その声は、宗茂の脳に届いた。

「清正!?」


声のした方へまっすぐ馬を走らせる宗茂。

その先にはあの井戸があった。

「あれか!」

馬を下りて猛ダッシュ。

井戸の中を覗き込んだ。

水の中に浮かぶ二人の姿があった。

「清正!」

声の方向、
清正は顔を上げた。

「宗茂!どうしてここが!?」
「イイからつかまれ!」


波のある井戸の水。

手が届きそうで届かない。

「クソッ!」
「もう少し・・・。」

身を乗り出す宗茂。
「ダメだ!それ以上来たらお前も落ちるぞ!」


それでも宗茂は身を乗り出す。

「どうしてそこまでするの?」


女の声が聞こえてきた。


(これが井戸の霊か。)
宗茂は胸の中で納得した。


「ねぇ、どうして?」

「決まっているだろ。」

「なんで?」


「清正を愛しているからだ。」


その言葉が響いて数秒後、水の流れは止まった。
女が泣くのをやめたのだ。

「清正!」

伸ばした手はしっかりと清正の手をつかんだ。


何とか持ち上げられ、清正は井戸の外に出ることが出来た。

「ありがとう。むねし・・。」

清正がすべて言い終えるまえに、
宗茂は清正をギュッと抱きしめた。


「良かった、本当に・・・よかった。」

「宗茂。」

そして二人の前に現れた女。

「幸せそう、羨ましい。お幸せに。」

そう言い残すと消えていった。


「成仏・・・したのか?」
「さぁな?さぁ、屋敷に行くぞ、服を乾かして祭りに。」
「ああ、それなんだが。もう一人井戸の中に。」
「ん?」

2人が井戸の中を覗き込むともう姿はなかった。
「あれ?」
「まったく、見せつけてくれるものだ。」

司馬師は自力でよじ登ってきたようだ。

「なんつー・・・・。」
「俺もお前の祭りとやらに呼ばれているのだ、道案内を頼めるか?」
「仕方がない、一緒に行こうか。」
「すまないな。」

そこにあった馬は二頭。

清正の馬は司馬師が乗り、
宗茂の馬には宗茂、後ろに清正が乗る形になり、
立花の屋敷へ向かうことに。





宗茂
「ところで司馬師殿、ギン千代に呼ばれてきたのか?」
司馬師
「いいや、弟の目付に。」
清正
「ん?元姫か。そんなに祭りに行きたかったのか?」
司馬師
「ああ、何せその祭りの花火には言い伝えがあるらしいからな。」
宗茂
「・・・・・・。」
清正
「言い伝え?なんだ?」
宗茂
(あれ?これってまさか???)



夜になり、花火が上がる。

城の天守閣からでも良く見える。


清正
「すごいな・・・。」
宗茂
「だろ?」
清正
「毎年やるんだよな。」
宗茂
「ああ。」
清正
「じゃあ、来年も呼んでくれ。」
宗茂
「もちろんだ。」







fin

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