井戸の願い

「そうなんです。悪い事とはわかっているのですが。」

淡々と霊と話す清正。
そもそも、

「お前、その女が怖くないのか?」
「ん?なぜだ???」

「いや・・。」

どうやら清正は彼女が幽霊とは気づいていない。
一緒に落ちたもんだと思っているようだ。
「好きな男に裏切られりゃ、そりゃ腹が立つよな。」
「はい・・・だから、花火に行く人は片っ端。」
「きっと男も反省してるって。」
「そうでしょうか?」

「なぜ普通に会話ができるんだ。」

霊と清正の会話は続いていく。
「私、ずっと一緒にいたかった。でも裏切られた気持ちでいっぱいなんです。」
「そりゃな、そう思うよな。」
「はい。」
「でも、好きなんだろ。今でも。」
「え?」
「裏切られたと思っても、あんたはずっとその男を思っているわけだ。」
「あ・・・。」
「俺だってしょっちゅう頭に来るよ。でも、なんか離れられないんだよな。」
「離れると心が苦しくなる?」
「ん〜なるな。」
「悲しくなる?」
「そうだなぁ。」
「会いたい?」

「ああ、そうだな。」

女の目から涙がこぼれだした。

「本当にごめんなさい。」
「いいって。」

泣き止まない女。
どんどん涙があふれてくる。

・・・・。


「おい。」
司馬師が口を開いた。


「どうした?」
「この涙、冷たいぞ。」
「そりゃそうだろ、涙なんだから。」
「幽霊の涙がか?」
「え?お前幽霊だったのか?」
「そこからが問題か。」
「あそっか、成仏できなくてここにいるのか。」
「そういうことだ、話を戻していいか?」
「司馬師殿?」
「なんで霊の涙が冷たい?」
「泣いてるからだろ。」
「じゃあなぜ涙が具現化しているのだ?」
「・・・・??????あれ?」
「しかも泣きすぎではないか?」
「あれ?」

女が泣き続けると、井戸の底には涙があふれ出してきた。

「ちょっと待て!泣き止めよ!な!」

女の涙はどんどん溢れてくる。
泣けばなくほど、涙は井戸にたまっていく。

「おい、おかしな話だが、このままでは溺れるぞ。」
「なっ、えーーー!」

不思議なことに気づいたら二人の腰まで涙があふれてきた。

「こんな事ってあるかよ!」

「くそっ、上に誰かいないのか!!!」

井戸を見上げてもあるのは月だけ。







宗茂、気づいてくれ。

[ 50/55 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -