君を守れない自分が悔しい


ずっと松寿丸くんに抱きしめられたまま時間がたった。
それからぽつりぽつりと話しを始めた彼。

「…我の婚約者は、貴様と同じなのだ…」

「わたしと同じ…?」

一瞬思考回路の止まったわたしを気にすることなく彼の話は続く。

「顔も、性格も、名前も…」

「うそっ?!」

あまりの驚きで、松寿丸くんから体を離した。
だってそんなことあるわけがない。世の中には自分に似た人が三人いるとかいうことを聞いたことはあるけれど、そんなに馬鹿みたいにそっくりだなんて、あり得ないんだ。
けれど松寿丸くんはきっと嘘は言わない。…優しい子だから。

「嘘ではない!」

松寿丸くんはまっすぐな目をしてわたしを見つめていた。松寿丸くんに見つめられるとどうして、こんなに彼を思い出してしまうのだろう。彼ってもちろん、わたしの本当に大切な人。

「…葉子と我は結ばれないと、わかっている。だから結んだ婚姻だ」

「……」

「だが、あやつは…あやつは本当に葉子、なのだ」

「………」

そんな…。思わず手を口元に当てた。
似てる、というよりもそれでは同一人物。同一人物なんて、おかしい。あり得ない…!

「わたし、その子に会いたい!」

「は」

「会ってみたい。会って、話したいことがあるの」

「……」

松寿丸くんはしばらく考えるような仕草をして、もうすぐ、と切り出した。

「我の元服の日がくる」

「元服…?」

「そのときあやつも来るであろう」

だから…

わたしは松寿丸くんの言葉に強く頷いた。




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