新たな出会い
幸村くんを迎えに行く最中、可愛らしい子犬がダンボールに入っていた。誰かが捨てたのだろうと可哀想に思い、拾ってみた。顔をよく見て何故か幸村くんを思い出したわたしは急いで彼の所へ向かった。
チャイムを鳴らすと、佐助くんの返事が飛んでくる。ガチャ、と開いたドアから顔を覗かせた佐助くんはわたしの抱いた子犬を見てぽつり。
「……旦那そっくり」
「…でしょ?」
「…………、あ、おはよう壱子ちゃん」
旦那が遂に犬にでもなったんじゃないか、とか思ったよ。言って苦笑した佐助くんにあぁそんな感じもするな、と笑った。
と、いつも通り奥からどたどたと大きな音が出て幸村くんが走って来た。
「…っおはようございまする!壱子ど…の…」
「ワン!」
「…ど、どうしたのでござるか、この犬…」
「拾いました」
幸村くんに似ていたのでつい…とは流石に言わなかったが、佐助くんは言わずともわかったようで苦笑されていた。まったく佐助くんはすごいなぁ。
「…で、壱子ちゃんこの犬どうすんの」
「…あ…」
そうだ今から学校なのに犬を連れて来てしまった。どうしよう、少し悩んだとき、佐助くんの溜め息が聞こえた。
「うちに置いて行きなよ」
「いいんですか?」
「旦那をほっとくわけにはいかないでしょ?」
「…?某のことか?」
「違う違うこの犬のこと」
何かちょっと面白いな、と思って見ていたが、子犬を佐助くんに渡すと佐助くんは本当に旦那だな…とか呟いて奥へ行ってしまわれた。
「ペットは大丈夫なのですか?」
「うむ…内緒でござる!」
「そうですか」
軽くなった腕を見つめて生き物ってすごいな、と感心する。
「二人とも先行ってていいよ。行ってらっしゃい」
「佐助くんは?」
「ん?俺様も行くけどちょっとこいつをね…」
「ありがとうございます!」
「どういたしまして」
何だか佐助くんに子犬を押し付けて来たようで申し訳なかったのだが、隣で幸村くんが佐助なら大丈夫であろ、と言われたので安心して押し付けることにした。
「壱子殿、どうして犬を?」
「幸村くんに似てたから」
「そ、某に?!」
「何だか幸村くんみたいでほっておけませんでした」
「なっ!!」
幸村くんを見れば、彼はほんのり頬を染めてそっぽを向いておられる。これは禁止ワードか。
「そ、某は犬ではござらん!」
「照れてます?」
「!、っ照れてなんかない!!」
今度こそ真っ赤になって早足になった彼を追いかけながら相変わらず表情豊かな人だな、と微笑んだ。
「……、何笑っているのでござるか」
「幸村くんは面白い人だな、と思って」
「っ、怒りますぞ!」
ころころ変わる幸村くんの表現を眩しいような、羨ましいようなそんな思いで見上げながら学校へ歩を進めた。