今は君の隣を歩く
あまりにも意外だった言葉に目を丸くした佐助くん。大丈夫、わかってるよ。あたし。
「それから…」
「……ぁ…!」
「幸村くんが好きです!」
振り向いて、後ろで立ちつくした幸村くんに言った。途端、目を見開きあたしから逸らさない視線。そうだ。あたしはこの人が好きなんだ。きっと、小学生の頃から、そして離れていた中学生のときも、ずっと好きで、高校生になってやっと気づいた。やっと、言えた…!
「壱子殿っ!!」
急に飛びついた幸村くんを支えるのによろりとした。ぎゅう、と強く抱きしめられ、胸がいっぱいになった。
「壱子殿っ!某…、某、嬉しいでござるっ!」
幸村くんの顔が埋められたあたしの首もとがじんわりと濡れていくのを感じた。感じて、わたしもそっと幸村くんの背中に腕を回した。
「壱子殿は…出会ったころはいつも一人ぼっちで、某は心配でござった。」
優しい幸村くんの声色、思い返してみればそうだったかもしれない。だから…だから、そんなわたしの太陽があなた。
「某も壱子殿が好きでござる!」
「…幸村くん…!」
「な、なかなか言えなかったが…」
ずっと好きであった。なんとも言い難い幸福感とどうしようもない心拍数にくらりとした。
頬が熱い。この心臓の音がそっくり幸村くんに聞こえていそうで、わたしは恥ずかしくなって途端に幸村くんから離れた。
「…壱子…殿…?」
不安げに眉を下げ、瞳を揺らす彼。
こんな人でも幸村くんはわたしの唯一。
「ば、ばーか!大好きですよっ!!」
ぽかんとした幸村くん…と佐助くんを置いてわたしは屋上から走り去った。だってもうすぐチャイムが鳴る!
後ろからは慌てたような二人の足音が聞こえる。
大丈夫。もうわたしは一人じゃない…!わたしの居場所は幸村くんの隣…!
と、後ろから焦ったような幸村くんの声が聞こえ、振り返った。
君の周りを回る
「壱子殿っ!!そ、某も大好きでござるうぅぅぅ!……は、破廉恥っ!!」