君を忘れた日曜日


いつもよりずっと遅くに起きて、眠たい目を擦った。休みの日はのんびりできるから好きだ。と、いうかきっと休みの日が嫌いな人なんて、そういないと思うけど。

とりあえずやっとはっきりしてきた視界で辺りを見回したが、何故かわたしは全然知らない場所にいる。…あれ…ここどこだ……。

「…あのー…誰かいますかー…?」

布団からゆっくり起き上がり、その綺麗にまとまった部屋を見回した。無駄な物のない、更に生活感のない部屋。窓から入る日差しが眩しかった。

「…相変わらずだらしない奴ぞ」

と、男の人の声が入り口からして、がらりと襖が開いた。人がいたことに驚いたわたしはその襖から出てきた人物を凝視してしまう。…いや、全然知らない人なんですけど、どうしましょう…。てか全然知らない人に相変わらずだらしないとか言われたよ。怖い怖い。…いやでもえらい美人だな、男前…!

「…あ、あのー…もしかしてわたしはあなたに攫われちゃったりなんかしちゃったんですか?」

あまりにもはっきり言い過ぎただろうか。目の前の全然知らない美人さんは眉間に皺を寄せ、わたしを睨みつけた。

「貴様なんぞを攫うわけない。大体人攫いなどしない」

「…え?…あ、そうすか」

なんか今度は貴様なんぞとか言われちゃったぞ、全然知らない男前に。いや、別に怒ったりはしないけれど、なんていうか、身に覚えがないって怖い。

「…で、あなたは誰ですか?」

いや、絶対にこんな男前が知り合いにはいない。だって男前なら忘れたりしないもの。でもわたしはこの男前かつ美人な彼を知らない。と、いうか記憶にない。

彼は、わたしの発言にいよいよ苛立ち始めたようで先程よりもきつくわたしを睨んだ。

「貴様、ついに頭がいかれたか」

「い、いかれたとか…」

今初めて会ったような人に言われたくない。と、言うかまじでここどこだよ。お前誰だよっていう…。

「あ、あのさ…わたしは何でここにいるの…?」

「覚えていないのか」

「え?何かあったの?」

え、いやいやここ重要だよ!そんな知らないうちにこんな男前と一夜過ごしちゃったとかなったら問題だよ!お嫁にいけないよ!

「貴様、本当になまえか。」

「…なまえ?」

「自分の名も忘れたか」

「いえいえ、覚えてますよ」でも、どうしてこの美人さんがわたしの名前を知っているのだろうか。あれ。もしかしてわたしが彼を忘れているの…?

「あなた、名前は…?」

「……」

同じ質問をすると、彼は二度目なので渋々口を開いた。

「…毛利元就」

「毛利、元就…」

じゃあとりあえず元就でいい?そう聞くと彼はわたしの頭にスリッパを投げつけた。

「え?え?急に何…?」

「さまをつけろ」

「…」

さま?知らない人に容赦なくスリッパ投げつけられたと思ったら呼び捨て禁止だなんてまったく元就くんは……?!!
元就、くんってなんだ…?

「ちなみにわたし達の関係は…?」

なんだか頭がこんがらがってきたわたしが、そう聞くと彼は悩んだような表情を見せた。

「……友人…」

「…友達…?」

なんだ、大したことない関係じゃないか。と思いつつもくすくすと笑顔は零れていく。
だって、友達って言うのに不安そうな顔をする元就くんが、もの凄く可愛かったんだもの!

「おはよう!元就くん!」

ば、と布団から出て、彼に抱きついた。
目を見開き、何事だ、と言う顔をする元就くんはやはり可愛い。
…ってあれ、わたし、思い出しているじゃないか!

「ごめんね、元就くん。今やっと思い出したからね!」

「は?」

元就くんは眉間に皺を寄せているが、まったくこんなに大好きな元就くんを忘れてしまうだなんてわたしったらどうかしてる!

「それから元就くん」

「何だ」

「わたし達が友達じゃないよ。恋人だよ」

言って唇を合わせると、彼は真っ赤になったのだった。




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