君の一番になりたいよ
元就くんに嫌われた。最近はあからさまに冷たいし、喋っても素っ気ない。
その内近寄るな、とか言われて、挙げ句の果てには友達止める宣言が来るのだろうか。"貴様は我の何でもない"みたいな感じで。
「今日も始まった被害妄想」
「…はんべ…」
はんべは何もわかってない。まぁそれは仕方ないことなんだけれどさ。もうちょっといいフォローがあるじゃんか。例えば…"そんなに嫌われてはないよ、ちょっとだけさ"みたいな感じで。いや、これってフォローなのか?…てかフォローして欲しいのかあたしは。
どんよりとあたしを包む自己嫌悪なオーラにあたしはどんどん溶けていくようだ。
「君はそんなに毛利くんが好きなのかい」
「好きだよ。けれどこれは恋愛感情じゃないよ」
大体どちらかと言うと恋愛感情的にははんべのが好きだと思う。まぁそんなことどうでもいいんだけど。
「どうしたらもっと仲良くなれるのかな」
「十分仲が良いと思うけど?」
「それは客観的な意見だよ」
そう言うと、はんべは呆れた風に溜め息を吐いた。
「今日はやけにネガティブだね」
はんべはくすくす笑ってあたしを見た。
何だその余裕の笑みは。
「君って案外鈍感?」
「は?」
鈍感ってなんだ、と言うような視線を向けると彼の笑みは増すばかり。
そしてはんべはあたしの頭に手を置いて困った風に笑う。
だってさぁ、友達に今にも嫌われようとしてんだぜ?そんな状況で
「笑ってなんかられないでしょ!」
「辛いときこそ笑っているって言うのもあるんじゃないかい?」
「つ、辛いときに笑うだと…!?」
でもそれってすごいかもしれない。強くなれるかな。
「あ、じゃあ聞くけどはんべは秀吉先生に嫌われても笑っていられるの?」
聞いた途端、ぴき、とはんべが固まり、そして動かなくなった。まさかの反応にびびりながら、はんべの名を呼べば、彼はなんとか反応した。
「……笑ってられない…」
「でしょ?」
あぁどうしよう。人ってそんなに強くできていない。たった一人でも、その人はあたしの中の何百人にも値して、それが元就くんで…。
「君が本当に毛利くんに嫌われたとしても」
「…?」
「僕は君のこと、好きなままだから安心しなよ」
「な…?!」
今度こそぴき、と固まったあたしをはんべはくすくすと笑う。
じょ、冗談でもそういうことは言わないでほしい。し、心臓がいくつあってもたりないじゃないか!
「冗談じゃないよ?」
「…は、はんべ…」
「何なら毛利くんに宣戦布告してあげてもいいよ」
にこりと天使も痺れる甘いルックスからは信じられない言葉が発せられ、あたしは口を金魚みたいにぱくぱくすることしかできない。
「あ、前言撤回。僕は毛利くんのこと、嫌いだよ」
や、やめてくれ。はんべはあたしを心臓麻痺で殺す気か!