一時停止は見えません


恋って何かこうとても温かいものだ!
あたしが初めて殿方…そう、幸村くんに恋心を抱いた日からあたしの人生は薔薇色に輝いている。
今はまだ一方通行ながらも、いつか幸村くんを振り向かそうと、あたしの努力は怠らない。例えば…ってまぁそんなことどうでもいいか。
何とまぁ偶然!退屈な登校時、ほんと偶然にあたしは前方に幸村くんを発見したのである!

「幸村くん幸村くん、今日もかっこいいですね」

「なっ!なまえ殿…」

「うん、あたしを見た途端顔が引きつった幸村くんも素敵です!」

音もなく忍び寄ったあたしに幸村くんは相変わらず"げ"、って言うような顔をされたのだがあたしはそんな幸村くんも好きです!そう、恋する乙女は無敵なのである!

「きょ、今日はどうされたのでござるか…?」

「何を仰りますか幸村くん!学校に行く途中なのでございますよ」

「そ、そうだったでござるな」

「はい!おはようございます!」

「お、おはようにございまする」

幸村くんはあたしと喋るとき毎回どもられるのですがそれは緊張からだとあたしは信じます。何たって女子が苦手な幸村くんだもの!

「あ、そういえば佐助くんは?」

「佐助はまだ家でござる」

「あら、珍しい」

今日は何とまぁついている日でしょう!なんたってあの佐助くんという恋のライバルがいないのですっ!彼はいつも幸村くんの傍にいて、きっと彼も幸村くんが好きなんですよ。つまり彼はあたしのライバル!

「今日に限って佐助がいないとは…」

「…え?幸村くん何か言いましたか?」

「な、何でもないでござるっ!」

何故だか顔色の悪い幸村くんに少し心配になりつつもあたしは幸村くんの腕にくっついた。あぁあたしは今最高に幸せです!これ、周りから見たら恋人同士に見えたりするのかな、とよそ見をしていたときだった。

「、っ…!!」

「……あぁ?!」

何だか恐い感じのお兄さんに肩がぶつかってしまってさぁ大変!元々道幅が狭かったから誰かと肩がぶつかることはあったのだが、今回は流石にあたしが悪い。すいません、と頭を下げたのに恐い感じのお兄さんはあたしの胸倉に掴みかかってきたのだった。

「てめぇ、すいませんで済むと思ってんのかぁ?!」

「ひぃっ!」

あまりにも怖くて半泣きになっていたとき、あたしの首への圧迫感はなくなり、目の前には幸村くん。

「貴様、女子に乱暴とは男子としてあるまじき行為であるぞ!」

「あぁ?何だ兄ちゃん俺とやり合おうってか?」

な、何ということでしょう。目の前に広がるこの素晴らしい光景!幸村くんはまるであたしを守る騎士。そしてあたしは命を狙われるお姫様!フィルターがかかっているかの如く、幸村くんの周りには薔薇の花が見える。あぁロミオ、どうしてあなたはロミオなの!

「幸村くん…!」

「ぶつかったのはなまえ#殿だったやもしれぬ。が、なまえ殿に乱暴したことは許さぬぞ!」

「…っ!、あぁ!」

ゆ、幸村くん素敵すぎる。これは、"なまえ殿は確かに美しい。だが貴様のものではない!"とかそういう場面なのか、あぁ…あたし骨の髄まで溶けてしまいそうだ…。

「もっとやれ、幸村くん!あ、で、でもこんな所で争ってはいけませんわっ!」

「なまえ殿は下がっていて下され!こやつは某が…!」

「…幸村くんっ!」

か、かっこよすぎるわ幸村くんあたしのために戦ってくれるというの、あぁなんてことあたしは罪な女。

「幸村くんっ!素敵です!結婚して下さいっ!」

「ぎゃあぁっ!!」

「えぇっ、ちょ!!なまえどのぉぉっ?!」

恐い感じのお兄さんが幸村くんに掴みかかった瞬間あたしはそのお兄さんの股間に蹴りを一発。痛みに半泣きになった彼に背負い投げを決めてみせたのである。泡を吹いて倒れた男を置いて、あたしは思わず幸村くんに抱きついた。

「あたし、頑張って幸村くんにお似合いのお嫁さんになってみせますね!」

「………なまえ殿…」

何故か自分の股間を押さえて引き笑いを浮かべた幸村くんにあたしは構わずすり寄ったのだった。



Please stop!!
(頼むから止まって!)
(Sorry、あたしの思いは止められないの!)







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企画、愛言葉さまに提出させていただきました。ありがとうございました。

091220




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