毒です。あなたは毒なのです。


次の日、わたしは改めて告白してくれた男子に断りに行った。彼は受け入れてくれたが、友達として、わたしと仲良くしたいと言ったので、了解すれば、隣の元就くんが野次を飛ばした。そうなのだ。わたしは嫌がったのに元就くんも着いてきたのだ。

「懲りぬ奴ぞ」

「も、元就くん!」

大体元就くんは先程からうるさいのだ。今日は朝から不機嫌だったし、確かに元就くんからの告白に"嬉しいなんかないんだから!"とか何とか言ってしまったわたしも悪いが、そんなに怒らないでほしい。っていうか、その言葉の裏の気持ちを汲み取って欲しい!………ってこれは無理かな。

「人からの好意にそういう言い方はよくないよ!」

「…っ……」

そう言えば、途端に眼光が厳しくなりたじろいだ。男子の方(名前知らない)はわたし達の険悪なムードに苦笑し、ありがとう、と言って去って行かれる。

しかし、最後、彼が"もしかして毛利と付き合ってた?"という質問には、元就くんの手前だったからなのか、男子の方の手前だったからなのか、どうしても答えられなかった。

「……」

「……」

放課後、またしても必然的に一緒に帰ることになったわたし達だが、気まずい。相変わらず気まずい。元就くんの額には青筋が浮かんでいるような気もするし、次に喋りかけたら殺されそうだ。眼光で。
それでもわたしはこの長い勝負に決着をつけなければならない!

「…元就く」

「おい」

「な、何」

元就くんはわたしの話を遮るのが好きなようで、やはり不機嫌な表情でわたしを睨んだ。怖いな。

「貴様は我からの好意には嬉しくないと言った癖に、あんな奴からの好意は大切にすると言うのか」

「…あ…」

た、確かに元就くんから見たらそうなると思う。けれど、それには裏があって…

「我等はいつまでも友という枠からは逃れられないと言うのか」

「……ぅっ…」

元就くんは悔しそうに顔をしかめ、拳を握りしめた。

「我は昔から貴様が好きであった。貴様を一番見てきたのは我であるぞ」

貴様は我を見てはくれぬのか、言って寂しげな表情を見せた元就くんに胸がぎゅ、と締め付けられる思いがした。元就くんは、ずっとずっと、わたしを見てきてくれた。
そっと近づいた彼の顔を受け入れると、彼の唇はわたしの額に触れた。
………ってはい?…わ、わわわたし何で受け入れてんの?!と、いうかせ、せせ接吻?!

ぼん、と顔が熱くなって、唇が触れた場所がさらに熱い。元就くんの口角が僅かに上がり、またもや近づいた彼の綺麗な顔を必死に押し返した。

「ももも元就くんっ!」

元就くんを押し返すため、口元にあった手を元就くんの赤々している舌が舐めて、途端に驚き、手を離したその隙に壁際に追い込まれ、手を塞がれた。

「貴様は我が嫌いか」

「き、嫌い?!…い、いや別にそんなことはないけど…」

元就くんの顔が近い。直視できず、目を逸らす。ぎゃー!どきどきするっ!てかどうしてこんなときに限って誰もこの道を通らないんだ!元就くんの破廉恥野郎!破廉恥すぎる!

「はっきりせぬか」

ちらり見た真剣な元就くんの表情。彼の瞳から逃げられなくなったわたしは生唾を飲み込み、覚悟を決めた。うん、わたし、本当は元就くんのこと……

「す、す、すきやきよりも好きよっ(わたしも実は元就くんのこと好きです)!」

………またもやわたしの口は勝手なことを喋り、ぽかんとまぬけな表情をした元就くんからするり逃れた。
元就くん!きっとわたしは元就くんにこの思いを告げるまで相当な時間がかかると思うの!
俊足で彼の元から去り、家へ突進するかのように入った。胸がどきどきして息が切れる。一先ず水を飲んで、深呼吸をしたら何だか心が軽くなった気がした。
そしてまぁ明日なんとかすればいいか、といい加減な考えを浮かばせるのだった。






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最近こんな元就氏を書くのが楽しい。
シリーズ化するかも




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