誰でも狼を飼っている


あまりにもつまらない日曜日。あまりにもつまらなくて、仕方なかったので元就くんに電話した。元就くんに電話したものの、彼がそう簡単に遊んでくれるわけもなかった。元就くんは勉強なら一緒にしてやる、とおっしゃったので、あたしは元就くんと勉強をすることになった。そして今、元就くんの家で勉強をしている。あまりにもつまらない日曜日になんでまたつまらない勉強をしているのだろう。自分のそういう抜けているところに呆れて溜め息がでた。

「元就くん。このクッキー新発売なんだよ!一つどうですか?」

「……貴様は、何しに来たのだ」

「……」

だって勉強なんてしたくないじゃないか!せっかくの休日。勉強ばかりじゃ息が詰まるぜごほごほ。
呆れた様子で、勉強を再開された元就くんをじ、と見つめた。まったくこの人はどうしてこんなに綺麗なのだ。男の人なのに!そのくせ、性格は超がつくほど悪いんだよね。…いや、悪いっていうより酷いのかな…?
と、不満を膨らませたものの、あたしはそんな元就くんが好きなわけで。あ、いや別に元就くんが好きってのは、その…と、友達としてって意味でありましてっ!

「肌綺麗だな…」

勉強をする横顔を見てぽつり呟いた。なんでにきびの一つもないんだろう。しかも色白。

「指ほっそ!」

テレビによく出る、手のモデルさんの如く指は細く長い。爪も綺麗に切り揃えられていて何とまぁ清潔感の漂う手なのかしら。

「目も細いなぁ」

指も細いけど、目も細い。けれど色気の漂う目元に少し女として悔しい。睫毛も長いし何だよこの人。

「ほんとに男の子…?」

なんでまぁこんなに綺麗なんだ。女のあたしが悔しい。あたしにゃあ色気なんてものは程遠いし、頭悪いしがさつだし。元就くんのがよっぽど女の子だ。
とか思ってもう一度元就くんを見れば、彼はシャーペンを下ろし、下を向いておられた。口元がぴくってなったのですが……。

「貴様っいい加減にしろ!!」

顔を赤くして怒る姿にびっくりして目を丸くしてしまった。日頃感情を表に出さない彼がこうも怒るだなんて珍しい。いやしかし今回顔が赤いのは照れてるとかじゃなくて本当に怒っているのだろう。

「貴様がつまらぬと電話して来た故に我がわざわざ勉強に付き合ってやっているというのに貴様は…!」

「ひぃっ!ご、ごめんって。だって元就くんがあまりにも綺麗で、女の子みたいだったから…!」

冷や汗をだらだら垂らして元就くんとは対照的に顔を青くするあたし。
しかし元就くんはあたしのその言葉にぴた、と動きを止めた。

「…元就、くん…?」

また何か地雷を踏んだのだろうか。怖くなって後退ったとき、ばふん、とあたしの体は後ろへ倒れた。

「も、ももも元就くんっ?!」

「…貴様がそこまで言うのであれば我にも考えがある」

あたしは元就くんに押し倒されたようで、冷や汗がさらに垂れる。あの、元就くんが押し倒すだなんて、まるで男の子…!って、元就くんは普通の男の子じゃないか!

「これから貴様に我が男であると言うことを存分に教えてやろうか」

「ひっ!!」

耳元でそう呟いた元就くん。吐息やら何やらで頭が混乱したあたしが思わず目を瞑ったとき。

「………」

「……あれ……?」

何か起きると思ったのに目を開けたときあたしの上には元就くんはいなくて、再びシャーペンを握っていた。

「あ、あの、元就くん…?」

「フン、我が貴様に手を出すわけなかろう」

それともなんだ、期待したのか、にやり、とまた笑った元就くん。顔が急に熱くなってあたしはからかわれたのだ、と恥ずかしくなった。

「も、元就くんは立派な男の子でしたっ!」
恥ずかしくてたまらなくて元就くんに背を向けて膝を抱えた。
そんなあたしを見て、優しく微笑む元就くんがいたことは、誰も知らないのである。








------
20100307#元就氏も男の子だよ。って話




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -