どうか溶けないでね


学校からの帰り道。ほんの気まぐれで訪れたケーキ屋さんに知ってる後ろ姿を見つけた。

「…幸村くん…」

幸村くんは最近お友達になった方です。と、言うのも彼は他人であるわたしが、道に迷い困っていたとき助けて下さったのです。 同じ学校に通っていながら、彼とは違うクラスでしたし、喋ったこともなかったので、関わりがなかったですが、そのことをきっかけにわたし達はお友達になったのです。

「、っなまえ殿っ!そ、その、某は別に……!」

まさに、見つかってしまった、みたいな顔をした幸村くん。それから顔を赤くしてあたふたする姿が面白かった。幸村くんって結構目立つよね。

「幸村くんは、甘い物好きなのですか?」

「い、いや…そんなこ、とは…!」

「わたし、ここに来たの初めてなので何が美味しいのか教えていただけませんか」

丁度よかった。幸村くんがいて下さって。まったく気まぐれで来たとはいい、本当に知らないお店で何がよいのかもわからなかったので助かった。

「う、うむ」

何だか渋々と言った様子の幸村くん。まだ顔はほのかに赤いし、まったくどうしてしまったのやら。

「なまえ殿、は、何が食べたいのでござるか」

「幸村くんの好きな物がいいです」

「そ、そそ某のっ?!」

今度は嬉しそうにした幸村くん。ころころ変わる彼の表情が面白い。

「そ、某は…ショートケーキが…ぶつぶつ」

何か後半は聞きとれなかったけど、幸村くんはショートケーキが好きらしい。どれどれ、とショーケースを覗けば、確かに生クリームの多めな可愛らしいショートケーキがあった。
へぇ、幸村くんはこれが好きなのかぁ、とちらり幸村くんを見れば彼と視線が合った。彼は固まっておられる。

「すいません、ショートケーキ二つ下さい」

「こちらでお召し上がりに?」

「はい」

珍しく、お店でケーキが食べられるところらしいので、二つ頼んで、席に座った。もちろん幸村くんも一緒だ。

「はい、幸村くんも食べましょう」

「某にっ?!」

二つ買ったうちの一つを幸村くんに渡せば、彼はあわあわと慌てて手を振られる。

「なまえ殿のケーキを食べるだなんて…!」

「まぁまぁ、そう言いなさんな」

強引に幸村くんを言いくるめれば、彼は照れくさそうに、ありがとうございまする、とおっしゃられ、ケーキを口にされた。途端にとろけてしまうんじゃないかってくらい頬を緩め、美味でござる、と、呟いた幸村くん。

「やっぱり甘いものが好きなんですね!」

くすくす笑えば少しばつの悪そうな顔をされ、彼はフォークを離した。

「…男子が甘味好きなど、格好悪いでござる」

「…。…なんで?」

あまりにも落ち込んだようだったから何事かと思えばなんだ、そんなことか。相変わらず笑っているわたしに幸村くんは目をぱちくりさせた。

「な、何故と聞かれれば困りまする…」

「理由がないのに格好悪いわけないじゃないですか!」

「…なまえ殿…」

今は甘いものが好きな男性だって多いし、ケーキバイキングにだって男性を見かける。そんなこと気にすることないんだよ。言ってケーキを頬張った。だいたいこんなに美味しいものが好きであることが恥ずかしいだなんて職人さんに失礼です!

「そうか!そうでござるか!」

納得した様子の幸村くんは目に涙を溜め、わたしの手を両手で握って、ありがとうございまするうぅっ!と大きな声を出されたから恥ずかしい。

「ゆ、幸村くんっ!」

「あ!某、なまえ殿の、お手を…!」

「…はい…?」

「は、はは破廉恥にござるううぅぁぁあ!」

何だか急に顔を真っ赤にした幸村くんは、慌ただしげに鞄を持つとすごい速さで店を出て行ってしまわれた。

「………」

残されたわたしは、幸村くんの飽きない面白さにくすくす笑いながら、後を追ったのだった。









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オチは相変わらずベタに:)

が、学パロって…な、なんぞや……?!
リクエスト内容は学パロだったのに、学生らしいところ一つもない!も、もしやあたしの幸村への愛が空回りして学パロになってくれないのか…?!いや、意味分からんですね。すいません。
えと、こんなものになってしまったのですが、鈴子さま、リクエスト本当にありがとうございました!書き直しならいくらでもします!




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