正直者が損する時代
わたしは、一目惚れなんていうことは一切信じない質だ。これはあくまでも前提として話すことにする。前提、だから知っていて下さい。なまえと聞いたら、一目惚れは信じない人、と思って下さい。
「それにしても毛利くんはどうしてこんなにも美人なんでしょうか」
「貴様とは食べているものが違うからな」
「えっ?!そ、そうだったの…?わたしてっきり毛利くんの肌が病的に白いのは毎日白パンしか食べてないからだと思っていたのに…」
「何の話だ莫迦者」
まぁそんなことどうでもいいことだ。わたしが気になっているのは、毛利くんがどうしてそんなにもスマート&クールなのかということだ。いや、スマート&クール&スパイシーだ。
「わたし、元就くんより美人な人を見たことがありません。」
いやほんとに。だって元就くんの周りはいつも薔薇が舞っている(元親くんに言ったら笑われたが)。それに元就くんに見つめられるとわたしの胸は苦しくなる(元親くんに言ったら逆に心配された)。
「元就くんはきっと神の申し子なのですよ」
だってこんなにも美しい。むしろ彼の美しさは罪だ。
「我は日輪の申し子ぞ」
「あ、そうなんですか。これは失礼」
まぁどっちでもいいのだが、元就くんは肌が綺麗だなぁ。ちっとも荒れていないしにきびなんて見当たらない。
「元就くんは女の子の憧れですよ」
「貴様先程から何なのだ。気味悪い」
「ぐさ」
ひ、ひどい…!気味悪いだなんて言われても傷つかないわたしだが、さすがに元就くんに言われて傷ついた。恐るべし元就くん。
「いやぁ、初めて入学式で見たときから綺麗な人だなぁと思っていたんですよ」
性格は最悪ですけど。小声で付け足したわたしの頭に筆箱が飛んできた。
「なっ?!い、痛い……」
「一言余計だ」
「だってわたしは本当のことしか言わないもの…」
正直者が痛い目みるのは仕方ないのだろうか。うん正直だものねぇ。てか元就くん綺麗だなぁ。美人だなぁ、余計なものがついていないし。あ、余計なものってのは脂肪とかにきびとかのことだよ。
「何だ貴様、我に惚れているのか」
「…ほ、惚れ…?」
惚れている?……ん?"初めて入学式で見たときから綺麗な人だなぁ、と思っていたんですよ"だとかわたしさっき言ったよね。
「……一目惚れ…?」
「………」
目の前で呆れた顔をした元就くん。いや、でもわたし最初に言ったんだよ。
なまえと聞いたら一目惚れは信じない人と覚えて下さい。って。言ったのに、わたしったら一目惚れしちゃってる…!!
「いやいやいや信じない」
「何をだ」
「だってわたし一目惚れなんて信じないもの!」
どうしよう、嘘をついてしまった…!わたしは正直者として今の今まで生きてきたのにふざけんな自分!
「信じるも信じないもないであろう」
「…え…?」
「信じずとも、惚れてしまったことには嘘はつけぬ」
「……」
そうか。わたしが今まで一目惚れを信じなかったのは自分が一目惚れをしたことがなかったからなのか。そうなのか?!
「あー!!もう頭が混乱してきた!元就くん、とりあえず結婚する?」
「拒否」
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何だよこれ