デレてないのに


暇だったあたしは面白半分で行ったメイド喫茶で知ってる人を見かけてしまった。見ない方がよかったのか、それともここに来ない方がよかったのか、目が合った途端にその人は顔を赤くしてあたしを睨みつけた。お、恐ろしい。メイド喫茶に鬼がいる…!!

「………お帰りなさいませお嬢様、さぁこちらへ」

彼はあたしに近づくて腕を掴みそう言った。強引にそれでいて有無を言わせない物言い。これはお嬢様っていうより捕虜の身になった気分なのだがどういうことなのだ。おい!

「あ、あの…」

「黙れ、次におかしなことを言えば貴様の命はないと思え」

「!!」

な、何だ脅されたぞ。てかやっぱりこの人元就くんだよね。毛利元就くん。なんで、こんなところ…ていうかメイド喫茶で働いているんだろう。男だよね、元就くんって。
あ、実は女の子で、そのことを隠して学校に行っていたとか…?うん、それならまぁ納得できるかも。だって元就くんって普通に女の子みたいに細いし白いし美人だし……何よりメイド服も普通に似合っているというか、女であるあたしより綺麗だよね。足ほっそ!!

「このことは絶対に人に言うでないぞ」

「……わ、わかった、から、首、絞めないでっ!」

はぁ、はぁ、と息切れしながら元就くんを睨んだ。涼しい顔をしている彼に少し頭にきた。

「何か注文せぬのか」

「えっと…じゃあじゃんけんとか…」

「…」

「じょ、うだんだって!息がっ、し、死ぬっ!!」

じゃあ何で彼はメイド喫茶で働いてんだよ面白いなぁ。でも聞いたらきっとまた首締められるんだろうな。
ちらりと周りを見たらみんな楽しそうな雰囲気で、羨ましい。あたしだって可愛いメイドさん達と遊びたかった!

「元就くんもあんなことしてるの?」

指差して、じゃんけんをしている子を見れば、元就くんは顔を赤くした。

「あ、でも何でもないよ。あたし新たに元就くんの本心見抜いたから」

「ば、莫迦者!我は…」

「ご奉仕って言葉が似合うよね、メイドって」

「!!」

元就くんってご奉仕させる側っぽいのに実はしたかったんだ。SっぽいM?いや命令的なMかな。

「どっちにしろ元就くんは病気なの?」

「わ、我を愚弄するか貴様!」

「え、でもこんなとこにいるなんて病気以外の何物でもないでしょ」

うんうん、多少なりともあたしは引いたわけだし、でもお客として来てるよか、ましだよ。だって元就くんがメイドさんにご飯食べさせられてるところなんて見たくないもの。

「き、貴様こそ何でここにいるのだ!」

「暇だったから行ってみたくて…」

初めて来たし、期待してたのに元就くんがいたなんてショックです。いや別に元就くんの弱みを握れたならいいけどさ。
日頃の恨みをやっと返せるときがきたのだ!只今運は、あたしに向いている!

「あ、そうだ、今度は政宗くんと来るよ!」

「絶対にやめろ!!」

「大丈夫、元就くんがいることは言わないから!」

「当たり前だ!」

本気で怒り始めた元就くんが恐いからちょっとからかうのは止めよう。
と、急に席を立った元就くん。彼を見れば、今さっききた客の相手に行ったようだ。にやにやしながら元就くんのお手並みを拝見することにしよう。

「あ、なりちゃん!今日も綺麗だね〜」

「フン!そんなこと言われても嬉しくなどないぞ!」

「く〜相変わらずのツンデレ振りも可愛いよ!」

あ、ツンデレ…?ツンデレキャラを売りにしていたんだね。てかツンデレっていうか素の元就くんだよね。

はぁ、何か疲れた。と店を出る前、ちらり見た元就くんと目が合ったので鼻で笑ってやったら元就くんは悔しそうな顔をしていた。ざまぁみろっての。






-----
中途半端な話数と締めの無さに泣きそうなのですが、三千hit記念企画はここでおしまいです!付き合って下さった皆様、ありがとうございました!




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -