不運も実力のうち


今日のわたしの一日は最悪、最低と言ってもいいくらい、悪いこと続きだった。
朝は目覚ましが鳴らずに、遅刻しかけたし、その上水溜まりを踏んで靴がびしょびしょになった。
昼はお弁当を食べようと蓋を開けたら中身がぐちゃぐちゃ。朝走ったからだ。と後悔する間もなく、それに気づいた元就くんが、貴様は豚の餌を食すのか、と言い放ったものだから、あたしの怒りは爆発。親が丹精込めて作ってくれた弁当を豚の餌だなんて許せない。友達が止めるのも気にせず、元就くんの胸倉へ掴みかかってお互い睨み合い。
それだけじゃない。帰りはまた元就くんとばったり遭遇してしまい、仕方なく一緒に帰る。

元々不運体質なわたしにはこうやって嫌なことが続く一日が周期的にやってくるのだ。

ぶす、と機嫌の悪い顔で早足にあるくと、びちゃびちゃと靴が音を鳴らす。

「うるさいぞ」

「黙って下さい、わかってます」

「何故貴様今日はそのように機嫌が悪いのだ」

「黙って下さい、そういう日なんです」

別にこっちだって機嫌が悪くなりたくてなってるわけじゃないんだ。ならざるを得ないんだ。わかれ、それくらい!

「大体元就くんは一人で帰ればいいじゃないですか、わたしに着いて来る理由がありません」

「……何をそんなに怒っている」

元就くんの呆れた溜め息が聞こえた。確かに今のは理不尽な怒りだった。別に謝る気はないが、少し反省。大体少し熱くなり過ぎている。

「……今日は不運な一日なんです」

「……ほぉ」

元就くんは興味がある、というような様子でわたしをちらり見た。他人の不幸は蜜の味、とか言うし、そりゃ誰だって気になるだろう。

「朝は目覚ましが鳴らなかったし、遅刻しかけた。昼は走って学校に来たから弁当ぐちゃぐちゃ。そのせいで元就くんに豚の餌とか言われるし、それにいら、として元就くんと喧嘩したし、帰りはその元就くんと帰ることになるし…」

「何だ貴様、ほとんど我関連ではないか」

「あたしの不幸の半分は元就くんのせいです」

「…き、貴様…!!」

胸倉を掴みかかられ、睨みつけられる。ほら、今日はいつもより元就くんと喧嘩する。

「その上今は元就くんに現在進行形で胸倉掴まれてるし…」

「……、っ…」

そう言えば、恨めしそうに手を離した元就くん。それから漂う気まずい雰囲気。

「…ごめんなさい」

「…、何…?」

まるで奇妙な物でも見るかのように、目を見開いた元就くん。そりゃ、わたしだってあぁだこうだと誰かに当たり散らしたい訳ではないんだ。それにさっきのわたしはあまりにも態度が悪かった。いくらイライラしているからと言って元就くんに当たるのはそれこそ最低なのだ。

「…今日のわたしはどうかしてます。」

「だから何だ」

「だから思わず元就くんに当たった。」

踏んでいた靴のかかとを直し、改めて靴を吐いた。それから数回深呼吸をした。

「はぁ…駄目だなぁ」

「……何がだ」

「元就くんに八つ当たりなんかしてさ、情けない」

「…」

あぁもう辛気臭い!わたしはこんなキャラじゃなかったし、だ、大体わたしが謝ることなんてないじゃない!だってわたしはいつも元就くんに迷惑かけられていて、嫌な目にあっていて、あぁ!イライラする!

「…あぁ!もうなんかやだ!むしゃくしゃする!」

運が悪いから何だ!靴がびしょびしょだから何だってんだ!

「よし、今からゲーセン行く!」

「……は?」

「元就くんも付いて来るなら付いて来れば?」

「お、おいっ!!」

そういいつつも、元就くんの腕を掴んで無理矢理連れて行くわたしはどうかしている。元就くんに迷惑かけるなんて、わたし、どうかしている!!








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昔から不運って言葉に弱い…
不運な星シリーズはかいてて楽しいのでリクエストが嬉しい!
梓川さま、リクエストありがとうございました!




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