ほら、いつも毛利の周りをうろちょろしている女。わたしはあの子が大嫌いだ。なぜかと言えばあの子が、"あの"毛利元就と仲がいいからだ。

べ、別にこれは嫉妬とかそんなわけではない。ただ、イライラするのだ。

毛利元就をあなたは知ってますか?あの人は人と関わることを嫌い、世界には自分しかいないと考えるような人…つまりそれ以外は彼にとってはゴミ同然。
生徒達からはマフィアと繋がっているとか、何人もの下僕がいるとか、根も葉もない噂を流され、誰も彼に近寄ろうとはしない。

そんな彼に臆することなく近づいた唯、一人があの女。

だから、イライラするのだ。


――わたしの家は毛利元就の家の隣で、小さい頃暇であったときは、同い年である毛利の家に行くこともあった。
ただ、決して奴に相手にされることはなく、いつも門前払いを食らっていたわたしは、どうかあの毛利と仲良くしたくて、友達になりたくて…。

本当に必死だったのだ。彼が好きそうな恰好をしてみたり、様々なことをした。…けれど彼が振り向いてくれることはなく、そのままわたしは高校生になった。


だが、高校生になってからだ。あの女が現れた。
あの女はあの鉄より金よりダイヤモンドより固い、彼のバリアを破り、彼の隣という席を、いとも容易く手に入れたのだ。

羨ましい。羨ましくて、悔しくて、悲しくて、だから、だからあの女が嫌いなのだ。
わたしよりもあの人を理解することができたあの女。わたしにはないものを持っているあの女。

わたしは、ただあの人にわたしを見て笑って欲しかった。彼の笑顔を傍で見たかっただけなのに、わたしにはそれさえもできないなんて。






(太陽と月の話)


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第三者目線の話。幸せの裏側には不幸せもあるんだよ。っていう。
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テーマ「人外ファンタジー」
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