冷や汗垂れる火曜日
実並殿は今日も相変わらずドジを踏んでいた。授業中に消しゴムを落としてなくしていたし、自分で落としたペンを自分で踏んで使えなくしていたし、全く呆れるのだ。
だが佐助にそう言ってもあやつはにやにやと不快な笑みを浮かべるだけ。
「旦那、何だかんだ言って実並のことよく見てるじゃん」
…は…?ふざけるな、そ、某は別に実並殿がほっとけないとかそうゆう訳ではない…!だ、大体いつもそんな風な実並殿が悪いのだ!某はただ呆れて、い…て
「顔、真っ赤。説得力ないよ」
へらへらと佐助が笑う。顔など赤くないっ!く、くそっ!佐助は某を何だと思っているのだっ!
「某は実並殿のことなどきらっ…!」
「わたしのこと?」
「!な、ななっ!実並殿っ!」
間が悪く現れたのは実並殿。にやにやする佐助と赤面してるらしい某を見比べてにこにこと笑う。くそ、実並殿のことなどき、嫌いだと言う気だったのだ…!
「なぁに、旦那。もしかして実並のことが好きなの?」
「さ、佐助っ!」
くそ、わかっているくせに佐助の奴め。後で覚えていろよ、お館様に言ってや…!
「え、幸村くん、わたしのこと好きなの…?」
ぽつり、騒いでいた某たちの間に入ってきた独り言のような実並殿の声。驚いて実並殿を見れば彼女の頬はほんのりと色づい…て…いた。
「そ、そんなことあるわけないでござろう!」
某を見つめる実並殿の真っ直ぐな瞳を見ていられなくて咄嗟に目をそらした。
ひゅー、と佐助の冷やかすような口笛が飛んで、実並殿の慌てたような声がした。
「そ、そうだよね!冗談だってのにわたしったら…」
「でも冗談じゃないかもよ?」
彼女と佐助の楽しそうな声がする。けれど某の頭はぐわんぐわんと揺れていた。
先程の実並殿の赤い顔や、某が違うと言ったときの傷ついたような顔。そして極めつけは今の台詞。わたしったら、何なのだろう。実並殿は、わたしったら、の後に何て言おうとしたのだろう。もしかして本気にしたのだろうか。
某は、実並殿を傷つけたのだろうか。
頭で否定はするものの、実並殿が心配でたまらない気持ち。
「あれ、実並、髪の毛に葉っぱついてる」
「あれ?また?」
「またって……」
…頭に葉っぱつけてるような女子なのに。ドジで抜けている女子なのに。