ため息零れる月曜日


最近転校してきた佐助の従姉妹はどじでどんくさい呆れるような子だった。
彼女は転校して以来、ずっと佐助にくっついておられる故、某とも関わることが多い。しかし彼女と関わってからの某の気苦労は絶えないのだ。

だが実並殿はそんな某の思いを知るよしもなく、今も無邪気に歩いておられる。

「幸村くん、幸村くん、今日は部活がありますか?」

「うむ」

実並殿は先程から某のななめ前を歩いているのだが、ずっと某を見ているから、躓いたり、転けかけたりしていてひやひやする。

「実並殿、ま、前を見て歩いて下され」

「え?…痛っ!」

今度は枝に髪の毛をひっかけた実並殿。

「だ、大丈夫でござるか?」

どうしてこうも彼女には災難ばかり起こるのだろうか。朝からこうも疲れては、昼からが心配だ。

彼女のからまった髪の毛を枝から外しながら、またため息を吐いた。

「取れたでござるよ」

「ありがとう幸村くん!」

髪の毛を手で直して、彼女は今度は某の隣に並んだ。

「あ、そうそう部活、見に行くね」

「うむ。それよりも佐助はどうしたのでござるか」

「佐助くん?あ、うん、先に行っててってさ。」

に、と笑って彼女は剣道の面打ちの真似をされた。幸村くん強いんだろうなぁなどと呑気に呟いているものだから、ほら……。

「…おわっ!!」

石に躓いて、転けそうになる実並殿の腕を取って支えた。

「気をつけて下され」

「う、うん、ごめん」

あはは、と苦笑して彼女は俯かれた。呆れるほど、どじでどんくさいのだが、こうやってしゅんとした姿を見るとほっとけないと思うのは、彼女の天性なのでござろう。

「実並殿は部活には入らないのでござるか」

「いやーだってさ、自分が部活するよりも、幸村くんや佐助くんの部活しているところを見る方が楽しいじゃん」

格好いいしさ、と彼女はにやり笑う。け、剣道では顔など見えぬだろう、そう言ったのに、彼女はまたにやり笑う。

「格好いいってのは顔だけのことを言ってるんじゃないんだよ?」

「な!」

どんどん顔が熱くなって、実並殿が隣にいるということが気恥ずかしくなってくる。咄嗟に早歩きをして実並殿の前を歩く。か、格好いいなどとそのようなこと…!だ、大体人前で言うことではなかろう……!あ、いや、違う!だからと言って二人きりのときに言ってほしいとかそういうわけではないのだ!
更に顔が熱くなり、実並殿の顔が見れない。

「幸村くんは何だか可愛いなぁ」

「…………」

今わかった。某は実並殿が苦手だ!




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