なめてかかると痛い目みる


「…どうしたら人になれるかな?」

「知らぬ。我に聞くな」

「…ですよねぇ」





幸せも全部





さっきまであたしを驚いたように見ていた癖に、急に溜め息を吐いた元就氏にいら、ときた。まったくもう、あたしは冗談でこんなことを言っているわけじゃないんだぜ!あたしはいつも本気である。嘘だってついたことないんだからな!

「………あれ、あたし嘘ついたことあったわ」

「…何の話だ…」

元就氏のあたしを哀れむ視線を感じつつ、あたしはどうしたら人になれるかを考えた。あたしが思うに、神様と人との違いってのはまず中身だと思うんだ。中身って何ってそりゃ臓物達のことなんだけどさぁ。でもまぁ中身なんて見えないからいいや。ま、他にもあるんだけど、やっぱりよく考えたらどれもあたしの力じゃ無理なわけよ。

「あ、じゃああたし今から人ってことでいいかな?いけそう?」

「その空っぽな頭が無理だと思うが」

「……よく言うよ」

「………、…」

「ぐ、ぐるしいっ!」

まったくもう!か弱い女の子の首を絞めるなんてもう、この野郎許さないぞ!

夏の暑い中、二人でギャーギャー騒ぎ合って、これはこれでいいし、あたしはこの時間が好きなのに、どうしてそれ以上を求めてしまうのだろう。

「貴様は人間になってどうしたいのだ」

「……」

そんな、どうしたいとかそんなんじゃなくて、あたしはただ元就氏が隣にいて、それで…

「そのままでよいだろう」

「よくないっ!」

「意味がわからぬ」

「…………」

だって神様と人は違うんだよ?大体神様なんて曖昧な存在、元就氏は隣にいることを許してくれるわけ?

「あたし、まだまだ死なないんだよ?」

「いいではないか」

「嫌だ!だって元就氏が死んでもあたしだけが若いまま生きている。元就氏が死んで、時代が変わってもあたしはそのまま」

「空に戻ればよいだろう」

「そんな簡単なことじゃないの!」

何だよ、元就氏の馬鹿野郎の分からず屋。元就氏には乙女の純情な気持ちがわからぬのか!…って別にこれ純情な気持ちじゃないや。

「あ…!」

「今度は何だ」

「元就氏が神様に…いでっ!!」

な、殴られた…!まだ最後まで言っていないのに…!

「ひ、人の話は最後まで聞きなさい!習ったで…あででっ!」

み、耳を引っ張らないで!てかまたしてもあたしの話を遮ったな…!こ、この野郎神様なめんなよ!

「莫迦だろ貴様。正真正銘の莫迦だ」

「…なっ!」

「我が神になどなれるわけないであろう。そんなことしたら中国の地は誰が治めるというのだ」

何だよ!人生初の友達よりここ中国をとるのかよ!でも確かに元就氏は神様にはなれないだろうな。うん、だって性格がひねくれて…

「誰に向かって口を聞いている」

「ひぃ!ぁ、あれ?あたし声に出していた?」

「貴様の考えそうなことなど容易くわかるわ」

「お、恐るべし元就氏…」





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