二つめも叶えられず、それでも神様
い、言ってしまった!元就氏があまりにも大人しいからってがつがつ言ったら元就氏もうんざりする、ってあたしはわかっていたのに。思わぬ自分の失体に頭を抱えて目を瞑った。あたしの心臓の激しい鼓動は治まることはないだろう。
幸せも全部
指の隙間から見た元就氏は何か言いたげにあたしを見て、それから息を大きく吸われた。
「ならば言う!貴様が来てからと言うものの我の心は貴様にかき乱されてばかりだ!
貴様を見ると我は無性に苛々する。だが、貴様がいないのも苛々する。
貴様を室に迎えればこの感情がわかるかと思ったのだ。だがやはり答えは出ないだろう。何なのだこの胸の内を締め付ける感じたこともないこの感情は…!!」
あたしが元就氏と出会って、初めてだと言うくらい喋った元就氏に思わずぽかん、とした。が、元就氏の言うことはあたしにはよくわからない。
「…あたしが嫌いだとか…?」
「莫迦者!違う!大体我は貴様のことを嫌いだとは言っておらぬっ!!」
「うぇ?!何であたし今ど突かれたわけ?!」
痛いな、と頭をさすりながらも元就氏のその言葉が嬉しかった。彼がやっと胸の内を話してくれたのだ。例えそれが憎しみであっても悲しみであっても、彼はあたしの立ち入りを許してくれているのだ。てか元就氏はあたしのことを嫌いだと思っていたのはあたしの思い違いだったのか。よかった。でも馬鹿なあたしには元就氏が言うその感情は憎しみやら何やらにしか聞こえないのだが…。
「…あ、もしくは本当に病気だったり…あはは…」
「…はぁ、貴様に話した我が間違っていた…」
呆れた風に彼は座り込み、溜め息を吐かれた。
でも
「間違ってなんかないよ」
「……何…?」
「あたしは元就氏の友達だから、元就氏があたしに言った不満やら何やらはあたしにとっては間違いじゃない!」
「…ひのわ…」
「元就氏が好きだよ!大好きっ!」
「……っ、………!!」
何度見たことだろう目を見開いて顔を真っ赤にした彼にぎゅ、と抱きついた。奥とかそんなの、今のあたしは興味ない。ただ元就氏の傍で楽しく神様やってれば、あたし、それでいいんだ!
「願いごとはまた叶えられそうにないです」
「……もう、いい」
「…何で…?」
「貴様がここにいるならそれでいい」
「それってどういうこと?」
「どうでもよいことだ」
溜め息混じりに僅かに微笑んだ元就氏。釣られて笑ったあたしの頬を掠った彼の人差し指は温かかった。やっと、この感情の名前がわかった。苦しみなんて初めて感じた。
幸せと共にこやつは我に人間を教えてくれたと言うのか。