友達だからこそ、何でも言える。信用してるから傷つくんだ。


それからやけくそで空へ飛んで帰る途中。急に雷が鳴り始めたと思えば直撃。気付いたら城の前に立っていた。

「…落雷に当たるとか初めて……」






幸せも全部






「それで貴様は帰ったのではないのか」

「……あれはきっと父様だったんですよ」

「何の話だ」

そうなのだ。きっとあれは父様だったのだ。父様は元々あたしが地上に行くことをよいとは思ってなくて、だからこそ目的も果たさず帰ってきたあたしに怒って雷を直撃させたのだろう。……ん?ちょっと待てあたしなんでこんなに冷静なわけ…?
…雷…に、当たった、だ…と…?

「ぎゃあああぁっ!あ、あたし死ぬっ、多分死ぬっ!」

「黙れ。我が殺してやろうか」

「……お、おい、冗談じゃないぜ元就氏」

隣の元就氏の目がきらりと光ったことに冷や汗垂らしつつもあたしは心を落ち着かせようと試みた。

「…何であたし生きてるわけ…?」

「知らぬ」

元就氏の冷たい視線がぐさぐさと心に刺さる。でもあたし、雷当たったのに何故生きているのだろう。

「……神様、だからけ…?」

そ、そうか!あたしが神様だから父様の落雷でも死ななかったのか。あ、いや違うわ。父様が娘殺すわけないから手加減したんだよね。謎が解けた!

「……帰らぬのか」

「…え…?」

何もかも忘れたように振る舞ってみせていたあたしだが、元就氏の冷たい視線は感じていたのだ。
でもよく考えてみんな。帰る、とか言ったのは確かにあたしだし、勝手に帰ろうとしたのはあたしだよ。けれど元就氏だって酷いのだ。元就氏はあたしのこと嫌いな癖に友達だと言うのだ。これはどういう……。
も、もしかしてこれは嫌いだけど友達。これは何だかべたな青春物語の幕開けを告げているのか…?

「……か、帰らないよ」

「……勝手な奴ぞ」

軽蔑するようなそんな物言いに居心地悪く感じて着物を握りしめた。

「…そ、それはわかってる」

「…わかっておらぬ」

「…………」

「わかっておらぬから貴様は帰ろうとしたのだ」

こちらを見た元就氏の強い眼差し。でもそれはどこか悲しそうで、あたしは胸が痛くなった。

「…貴様はいとも簡単に我の心に入り込んだ癖に、何事もなかったように消えるつもりだったのであろうっ!」

「………、っ!」

元就氏の傷ついたようなそんな視線、声色に胸がつまった。
…そうか、あたしは勝手すぎたのだ。…思い返せばあたしと元就氏の出会いは勝手ばかりだった。勝手に元就氏の前に現れ、勝手に彼の心をかき乱した。その上あたしは勝手に彼の元を帰ろうとした。あたしがやったことは全て元就氏の心をかき乱すだけ乱してそして彼を傷つけた。
自分がしたことに心から後悔した。

「…嫌いだと…?…貴様の今までは嘘であったのかっ!」

「……、ぁっ!」

首筋に当てられた輪刀。全てを拒むような元就氏の鋭い視線。あたしは何でこの人のことをわかってあげられなかったのだろう。元就氏はきっと、きっと、寂しかったのだ。

「……貴様には失望した…」

「………」

「貴様も他の奴らと差ほど変わらぬではないかっ!」

「ち、違っ!」

「……黙れ」

これは二度目。こんなことが前にもあった。けれど今回はもっと元就氏を傷つけた。

「……元就氏…」

「軽々しく我の名を呼ぶな」

「…っ……」

戸の前まで寄ったとき、思わず腰から崩れた。

「でも…でも、元就氏の心だってあたしにはわからないっ!」

あたしは前と同じことを吐き捨てて、元就氏の部屋から飛び出したのだった。





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