山がありゃ谷あるって、まぁ止めてくれ
何だか一段とまた元就氏と仲良くなれたような気がしてあたしは只今機嫌がいい。
夏の暑さなんて屁でもないくらいノリに乗ってる。
でもあたしの調子が上がっていくのと比例して元就氏の機嫌が悪くなっている気がするのだが、これはどういうことなのだ。あたしが鬱陶しいってことを態度で示そうとかそう言うつもりか!
ならばあたしは負けないさ。フン!その勝負乗ってやる!
幸せも全部
「それにしてもさっきの元就氏は何であんなに怒ってたんだろう…」
ちょっとだけ気になるな、と元就氏をちら見したら元就氏は人を殺せそうな目であたしを睨んでいた。
「……な、何…」
「我は怒ってなどおらぬ」
「えぇ!滅茶苦茶怒ってた……ってもしかしてあたし口に出していたのか!」
あちゃー!こりゃあちゃー、じゃすまないぞ!あたしは煮てさ、焼いてさ、食われちまうよ!
「貴様は我を何だと思っておる。貴様など食べては腹を壊す」
「あちゃー!今度のは口に出したつもりないのに!」
読心術ってやつか!そうなのか!元就氏最強だな。これで人間ってのは信じらんない!
「ま、いいや。昔のことなんて忘れよう」
あたしは未来を生きる女だから過去のことなんて気にしないよ。だって今の元就氏はちょっと機嫌が悪いだけであってもう怒ってない!そう!大切なのは今現在!
「…………」
「……元就氏?」
急に考え込むような仕草を見せた彼。突然訪れた静寂に何か不安がよぎって元就氏を覗き込めば彼はあたしを見て一言。
「二つ目の願いだ。貴様、我の奥になれ」
「ふふふそんなのお安いご用…ってはいいいっ!?」
い、いやいやいやちょっと待ってくれ元就氏よ!突然すぎる!ま、まだ早いだろっ!っていうよりあたし達はそんな関係ではなっしんぐ!
なっしんぐってのはエゲレス語なのだよ?これからは国際的な人間…あ、あたし神様か。が優遇されるからあたしもエゲレス語を喋れるように…
って馬鹿!話が飛び過ぎでしょ、あたしも元就氏も!
「なななななにゆえっ?!」
「奥になれ、とはどういう意味かもわからぬのか」
「い、いやわかりますよ!けどさ、そのなにゆえっ?!」
「くどいぞ」
何だ元就氏!実はあたしに惚れていたのかそうなのか!!本当は好きでたまらなかったのにわざと冷たくしてたのか!素直じゃないなぁ…じゃ済まないでしょ!
「もも元就氏っ?どこかで頭でも打ったりなんかしちゃったり…」
「阿呆か」
「ですよねぇ…じゃあ気でも狂っちゃったり…」
「殺されたいか」
「で、ですよねぇ…」
だ、駄目だ元就氏は正気じゃない!きっとそのうち壊れてしまうんだ元就氏!
どうしようお願いされちゃったよ。けどやはりあたし達の関係は友達だから…その
「そのお願いは聞けないって言うか、ごめんなさ…」
「貴様、言っておくがこれは命令だ」
「えぇ!!そんな、お願いって言った!」
「昔のことなど知らぬ」
「あ!それあたしの真似!」
どうしよう、決して嫌ではない。が、あたしにも好きな人ってのがいるわけで…ん?好きな人?それって元就氏のことだよね。あたしってば前に元就氏が好きだって…
で、でも、元就氏への好き、は誠一さんや左吉さんにも向けられる好き、で。でもだからと言って誠一さんや左吉さんに、奥になれと言われてもなれないわけで…
「好きって何?」
「知らぬ。我に聞くな」