夏の暑さにも負けぬ丈夫な体が欲しい


それからの日々はとりあえず暑いとしか言いようがなかった。やけに暑いからか元就氏はいつもに増して不機嫌だし理不尽だしあたしは溜め息が絶えなかった。





幸せも全部





暑い。日輪の神様が何を言ってるのか、と皆は呆れられるだろう。というかあたしが日輪の神様であることを忘れておられる方もいるだろうからもう一度自己紹介をば。

「我が名はひのわ!日輪の神様なり!」

「貴様殺されたいか」

「本当に申し訳ありません、命だけはお助けを…!」

元就氏もピリピリとしておられるし、あたしの異様な精神状態もまぁ暑さのせいなのだ。

「……貴様日輪の神様なのであろう、この暑さ、どうにかできぬのか」

「……あ、そっかあたしは日輪の神様だ」

皆様が忘れる前にあたしもすっかり忘れていたよ。って忘れるの早っ!

「って、どうすればいいの…?」

「そんなもの知らぬ」

「……あ、もしかしてこの暑さをどうにかするのって二つめの願い?」

「阿呆か」

「えーでも人の言うこと聞くのはあたしの仕事じゃないよ」

「元々貴様に仕事などなかろう。これは命令だ」

「くっそー!」

何だよ、神様使いが荒いなぁ全く!これがお願いなら何か出来そうな気がするのになぁ。

「ほいさっ!……ふっ!」

「…………」

「…………駄目みたい」

「……役立たずめ」

「聞こえてるよ元就氏」

うん。やっぱりこの暑さは仕方ないものなんだよ。夏が来るから米は育つし、ねぇ。
と、元就氏に言えば彼はそんなことわかっておるわとあたしの頬をつねられた。痛い。地味に痛いのだが。

汗を手拭いで拭いながら、あたしは先程女中の方が持って来てくれたお茶を啜った。暑いから冷ましてたんだよね。

「あ!」

「何だ」

「水浴びしてこよ!」

「貴様は子供か」

「えー年齢は関係なす!」

まぁ今でも子供のようなものなのだが、と元就氏がぼそり呟いたのをあたしは聞き逃さなかったよ。

「じゃ、行ってき…ぐぇっ!」

「貴様だけに良い思いなどさせぬ」

「な ん で だ よ!」

はぁっ、はぁっ!な、何も襟引っ張ることないだろ!苦しいわ、首締まるわ、元就氏はあたしを殺す気か!こっちがこんなに苦しんでるのに元就氏は随分と涼しそうな顔をしておられる。

「……何か騒いだから余計暑い」

「自業自得ぞ」

「三分の一ほど元就氏のせいだとあたしは言い切る」

「ほざけ」

何だよ冷たいな!元就氏は氷のように冷たいのにどうしてこの部屋は暑いんだよ!おかしい!あ、そうかいくら元就氏が氷のようでもあたしが日輪じゃあねぇ。

そういや元就氏も最近は暑いからか日光浴?の時間が少ない気がする。

「元就氏も日焼けとかするの?」

「…貴様我を何だと思っている」

「…そうだよね、元就氏も人間だし日焼けぐらいするかーあはは」

………小麦色の肌な元就氏を想像してみたんだが、やはり元就氏は白いままでいてほしいです!





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