君のためならなんだってできてしまう/元就ゆめ
2010/05/14 22:53
毛利元就という男は、わたしと言う存在に全くと言ってもいいほど興味のない人だ。
わたしは生まれたときから彼のために生きることを誓い、わたしが生きる理由には必ず毛利元就の存在があった。
なのに、だ。あの毛利元就は、全くわたしに興味を持ちはしなかった。
彼にとってのわたしの存在は当たり前なのだ。興味とか、そういう問題ではなく、いて当たり前。わたしは彼の矛であり盾。いることが当たり前なのだ。
「――忍、貴様は何故生きているのだ」
「元就さまの力であるためです」
「……貴様はいつもそうだな」
彼はついこの間に元服をし、毛利元就になった。
そんな彼の元で生きるわたしも、つい最近我が忍一族に代々受け継がれてきた名をいただいた。
何が変わると言うわけではないが、わたしにはもう逃げることができない。
「貴様はそれでよいのか」
「元就さまの力になることがわたしの生きる理由ですので」
「フン。貴様は面白みのない奴ぞ」
けれど、わたしはいつまでたっても、彼の元から逃げたいとは思わなかった。
忍の仕事は好きではないし、むしろ嫌いだが、わたしは今の自分に満足している。
「だが、それでよいのだ。駒は駒らしく我に従え」
「はい。そのつもりにございます」
「…我はこの地の安泰のために……」
そしてわたしは毛利元就のために。
この人に付いていけば、わたしは大丈夫。わたしでいられる。
彼はわたしの全てで、わたしの生きる理由なのだから。
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精神的に依存してる話が好き
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