「わっかんない!」
「うっさいわ黙れ」
「せんせーこの人怖い!」
「今のお前の先生は俺や、黙ってやらんかオラ」
「すんません」

数学が全然わかんないと嘆いていたら担任につけられた私専属教師。いや、まあただのクラスメートなんだけど。しかしこの人、口悪いわ暴言吐いてくるわ、少し意識が飛んでると声かける前に頭叩いてくるわでもう散々だ。私のない頭がさらになくなってしまったらどうしてくれるんだよ。
なんてこと本人に言えるはずもなく目の前の問題に頭を悩ます。Σ(シグマ)とかリミット計算とかなくなればいいのに…誰だよ作り出したやつは!数列も意味がわからないし!階差数列なんて消えてしまえ爆発しろ。

「…チッ」
「すいませんすいません私何かしましたか!?」
「ちゃうわアホ」
「どうも、アホです」
「みょうじってうざいんやな」
「財前くん、君は酷いよ」
「…」

遂に無視を決め込まれてしまった。もう為す術なしなの?見捨てられた?急にいたたまれない気持ちになって隣の机を覗きこむと、どうやら国語の長文で躓いているようで。心なしか眉間にしわが寄ってるし左手は人差し指でとんでもない早さでトントンと机を鳴らしている。ぶっちゃけ怖い。けど。

「これ、ちょっと前の文に傍線部と同じ意味の言葉があるからその周辺も含めてまとめるといいと思う」
「…」
「え、なんで更に眉間にしわが寄ってるの」
「お前に教えられたっちゅーことがムカつく」
「ご、ごめん…?」
「…助かった」
「!!」

うわあレアだよレア!あの財前くんにお礼言われちゃったよ!自分で言ったけどあのってどのだよって感じだけどね!ああああ録音したかった…!

「けど、こっちは別」
「え」
「解き終わるまで帰らせんからな」
「う、嘘だ…!」
「嘆くのは全部終わってからにしぃや。時間は戻ってこんねやから」
「ヒィィ…鬼ぃ…」
「あ゛?」
「端正込めてやらせていただきますね!」

たまに財前くんからアドバイスをされつつ課題を進めていく。こんなテスト一週間前の追い込みの時期に教えてもらえるなんてありがたいことだと思う。
そう思うと、財前くんって優しいんだな…私の中での普通だったら絶対やだ。しかもほとんど話したことのない、もはや顔見知りのような関係の人となんて。先生に言われてもうたからしゃーないとか思ってるのかな。いやいやでも財前くんなら拒否くらい出来るはず。実際そういう現場は何度か見たことがある。「頼んでもええか?」「は?いやっすわ」みたいな。先生自体も引き受けてくれるとは思ってなさそうだし。

「…なんや」
「財前くんって優しいんだね」
「はぁ?」
「ううん、こっちの話!」
「変なこといっとらんと解き。…あ、終わったんか」
「え?あ、うん。ごめんね、時間割いて貰っちゃって」
「ほんまやで」
「間髪いれなさすぎ!」
「お前、出来なさすぎて数学の教科書泣いとるわ」
「もう本当頭が上がりませんありがとうございました」
「ぜんざいでチャラや」
「え、かわいい!」
「ノルマ増やしたろか」
「勘弁してください」
「…ふ」

初めて笑ったとこ見た…!と感動するのも束の間、強烈なデコピンを食らってしまった。あああ私の大事な脳細胞たちが…!「どえす…!」「それ誉め言葉」「そんな馬鹿な」「お前ドMやろ」「他称がね!」「自慢すんなや」そんなアホらしい会話を繰り広げていたらいつの間にか校舎がしまる時間になっていて、急いで外に出る。先週まで暑かった気候はどこえやら、最近は朝と夕方が冷えてどことなく秋らしい空気になっていた。


コーヒーの半分はミルク


「また教えてね」
「気が向いたらな」
「…ぜんざい」
「高いの準備しとき」
「了解!」


title:宇宙の端っこで君に捧ぐ


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