私は幸村くんと違うクラス。他人よりも疎い私が今日の彼の回りの騒々しさに気付くわけもなく、もう既に私も男テニも部活が終わってしまった時間に同じクラスの仁王に言われて初めて知った。

「幸村くん、今日誕生日だったの…!?」
「おまんは今日のあの煩さにもなんとも思わんかったんか」
「男テニが集団で廊下を通るときとあんまり変わらなかったからなんとも…」
「あぁ…しかし幸村一人でそれだけ騒がしくなるもんなんじゃな」
「!…告白とか、多かったのかな…、もしかしてもう誰かと、」
「大丈夫じゃ、誰とも付き合うとらん。参謀と本人情報だから安心しんしゃい」
「よ、よかった…」

ほっと胸を撫で下ろす。仁王にぽんっと頭を撫でられるけど、若干かいた汗が気になった。だけど彼は止める気はなさそうだ。
いつからかは分からない。気付いたら私は幸村くんに心を奪われていた。その表現がよく似合う気がする。もちろん彼は男女ともに人気で、特に女の子からの支持は尋常ではない。だから、言い方は悪いけど敵となる女の子はたくさんいるのだ。私が幸村くんを好きだと自覚してから気が気でない。

と、いつの間にか撫でるのをやめていた仁王がちょんちょんと私をつついた。

「俺が幸村に電話しちゃるからおめでとうくらい言いんしゃい」
「えっ、いや無理だよ!それにミーハーな子だって誤解されたら嫌だし…っ」
「おまんがミーハーじゃないっちゅーことは幸村もわかっとるよ」
「そう、かな…ああああでもまともに話せる自信ないし…!」
「ん?あぁすまん、もう幸村にかけちゃったナリ」
「えっ、えええ!?」

決断できずにいるといつの間にか携帯を耳にあてていた。ちょっ、心の準備ってものがあるでしょう仁王の馬鹿ー!

「あ、おう幸村か?」
「!」

出て、しまったなんて…!このときばかりは少しだけ幸村くんを恨んでしまった。

「おまんと話したいっちゅー奴がおってのう。ちょいかわる。…ほら、待っとるよ?」
「うっ…だ、だって…!」
『…みょうじさん?』
「!?」

なんで出たのだとか名前呼ばれただとかは今はどうでもいい。幸村くん、なんで私の名前知ってるんですか…!
ほら、でんしゃい。と仁王にせかされ幸村くんにもバレてしまったので、緊張をなんとか表に出さないように電話に出る。

「えっと、幸村くん…だよね?」
『うん、俺だよ。みょうじさんだよね』
「は、はい。んと…誕生日、おめでとう。さっきまで知らなかったんだ、ごめんね」
『え、そうなの?…あ、いや、ありがとう』
「…?」
『で、なんで仁王の携帯から?』
「あっ…今日が幸村くんの誕生日だってことを教えてくれたの、仁王だから、です」
『ふふ、敬語じゃなくていいよ。同い年だろ?』
「そっ、そうだよね!」
『あーでも、なんか仁王だけ呼び捨てにされてるってなんかズルいよなぁ…』
「え…?」
『俺のことは名前で呼んでね、なまえちゃん』
「!」
「わー、真っ赤じゃ」
「に、仁王うるさい!」

えええちょっと頭沸きそうだよまさかの名前で、呼ばれた…!仁王にからかわれてさらに熱くなる。

『ただし、』
「?」
『二人でいるときだけ、ね?』
「〜〜ッ」


夢を本当にしたいんだ

好きな子には少しぐらい攻めたっていいだろう?


title×自慰


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