高校生設定


『これをもちまして卒業式を終了とさせていただきます』

体育館いっぱいの拍手をうけながら私たち3年生は退場していく。何人か泣いている人を見つけたけどやっぱり私は泣けなかった。感動しなかった訳じゃないし寂しくないなんてそんな訳ない。今のクラスメイトと別れてしまうのはすごく辛い。だけど、もう一生会えなくなってしまうわけではないのだ。実際少ししたあとにクラス会も開かれることだし。

それに私には、ずっと会いたかった人が待っている。



「!…っ、なまえ!」

正門、ではなく裏門で一人佇(たたず)んでいると後ろから抱き付かれよろめく。相手は見なくてもわかる。声でわかったし、寧ろこんなことをしてくるのは"彼"しかいない。

「っわ、!跡部くん、」
「やっと、やっと会えた…!」
「うん、うん…っ!」

跡部くんには許嫁がいた。私はただの一般人。始めてみたときはいい印象なんて持てなかった。寧ろ彼を見るだけで嫌悪感を抱いた。
─まあそれがきっかけで接点ができるようになったんだけど。
媚びを売らないからとかいう理由で生徒会に無理矢理いれられたり、マネージャーにさせられそうになったり。マネージャーは全力で断らせてもらった。だってこれ以上女の子たちに目をつけられるのは避けたかったもの。
一緒に仕事をこなしていくうちに、何でもそつなくこなすという彼への印象は単なる私たちがつけたレッテルなのだということに気付いた。その期待を裏切らないために裏で一生懸命にやっている姿をみて、嫌悪感しか抱かなかった私がついに惹かれ始めてしまった。
でも彼に許嫁がいるのは周知の事実だったからこの気持ちは胸に静かに仕舞っておこうとした。

そんなときに、告白を受けたのだ。ずっと恋人になることを夢見ていた彼から。

もちろんそれを受けた私だったけれど、やっぱり跡部財閥には私は邪魔な存在であって。高校三年間、私は跡部家からの支援を受けて氷帝ではない、別の私立高校に通った。会わず話さず、そして成績をトップクラスまでに伸ばさないと三年後、いやそれ以後会うことは許さないと言われた。それを聞いた私はショックで泣き崩れた。立ち直るまでに時間がかかった。
だけど、今私は彼と会うことができている。それは彼の家の方々が認めてくれた証拠。

「跡部くん…っ、私、私頑張ったよ…!」
「ああ、よく頑張った。流石は俺の認めた女だ」
「待っていてくれてありがとう。大好き、大好き…!」
「礼を言うのは俺もだ。なまえ、愛してる…」

どちらともなくしたキスは合わせるだけだったけれど、それだけで彼からの愛を感じることが出来た。

「なあ、右手出してくれ」
「?…あ…っ!!」
「ずっと俺が18になるまで我慢してた。でも今はもう我慢しなくてもいい。…なまえ、俺と結婚してください」
「はい…っ!」


愛し(かなし)

もう一生、離してなんかやんないんだから。


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