「一気に寒くなってきたなぁ…、もう冬だ。」


朝、外に出れば白くなる息。数日前まではこんなに冷え込んでなかったのに。昨日の夜は寒すぎて厚い毛布も押し入れから引っ張り出してきてしまった。


「なまえ、おはよ。」
「あ、幸村。おはよう。」


お向かいさんである幸村さんちの精市くんとは、大体家を出る時間が同じであるから自然と一緒に行くことが当たり前になっていっていた。早く行って誰もいない教室で外を眺めるのが好きなのだ。友達に言うと、大抵は不思議がられるけど。


「今日も早いんだね、じゃあ花壇の水やり頼んでもいい?」
「大丈夫だよ。教室にいてもボーッとしてるだけだしね。」
「そっか、ありがとう。」


電車通学の私たちは駅まで徒歩5分程だ。始めに一言二言交わしたら、あとは駅まで無言であることがほとんどである。その沈黙は重たいものでなく、むしろそれを楽しんでいるかのような、沈黙。冷たい空気を体で切りながら、今まで気付かなかった発見をしたり、白む空を眺めたり。やることは別々だけれど、なんだか心地のいいテンポで時間が流れている。


「…あ、」
「どうかした?」
「見て、あれ。」
「?…わ、石榴(ザクロ)?だよね。」


ぱっくりと開いた石榴の中は、紅色の小さな粒がたくさん詰まっていた。この前見たときはまだ閉じたままだったのに。ヒヨドリが実を啄(ツイバ)んで運んでいった。それを二人並んで眺める。ふとしたときにまた歩き出す。

これが、私たちの日常。


LとR

私たちのそれは、ふたりがいてこその世界。


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