おてがみだ。あたしの机の上に、ちょこんと置いてある。好奇心とちょっとの疑問の中その紙を開いてみると、"放課後 屋上に来て"とだけ書いてあった。んん?なんでだ?あたしのかったい頭ではわかるはずもなく、とりあえずいけばわかるかな、という軽い思いでいた。
そして、放課後。
重たい荷物は机に置きっぱなしにして、普段と変わらない足取りで階段を上る。そういえば今日は空がきれいだったなぁ、なんてのんきに考えていると、いつの間にか屋上へと繋がるドアの前にたっていた。なんのためらいもなく開けると、そこには、
「…なんもない。あれー、誰もいないじゃん。」
キィー…バタン、ガチャリ
「…ガチャリ?」
急いでドアにかけよって、開けようとしてみる。が、開かない。何度もドアノブをひねってみても、押しても引いても開かない。
これは、閉じ込められた?
固い頭のあたしでも、その事ははっきりとわかった。でも、なんで。今度は疑問が生まれる。なんかやらかしたっけ。わっかんなーい。
「…おいそこの、何やってんだよ。」
「いや、閉じ込められたみたいで…ってえぇぇぇ!」
「うるせー叫ぶんじゃねぇ!はっ倒すぞ。」
「ごめんなさい。」
…あれ、あたし誰と会話してるんだ?
「あの、失礼ですがあなたのお名前は、」
「あ゛ぁ?」
「ひぃぃっ!」
「、阿久津。」
「っへ?」
「阿久津仁だっつってんだろ一回で聞き取れ!」
「すみませんあたしはみょうじなまえですなんか生きててすみませんんん!」
「そこまでいってねぇよ!」
強面で銀髪のつんつんさんは阿久津仁というらしい。こんな不良さんこの学校にいたんだね…!でも意外に二枚目かも。
「なぁ、閉じ込められたっつったよな。」
「は、はい。」
「テメェのせいで俺も閉じ込められたじゃねぇの。」
「申し訳ありませんでしたぁぁぁあ!ケーキでも何でもおごりますので!」
「…その言葉、忘れんじゃねぇぞ。」
…やっちまったぁぁあ!この金欠状態で何ぬかしてんだあたしのアホォォオ!でもあたしのせいで阿久津さんも閉じ込められちゃったんだし、しょうがないよね。うん。そう考えないとダメだ。ショックで死ぬ。
「今日、部活ねぇんだな。」
下を覗いてのんきにいう阿久津さんはすごいと思う。この閉じ込められてる状況でこんな冷静。あたしには真似できないよ。只今パニック続行中だから。
「そう、みたいですね。」
「つーこたぁ、ここに人が来る確率はほぼねぇな。」
「そうですねって、え?」
「バカかテメェ、屋上は実際立ち入り禁止なんだよ。だから先公もこねぇ。」
「…ていうことは、」
一晩を、外で過ごせってこと?サァーッと血の気が引いていったのがわかった。春になって暖かくなってきたとはいえ、夜はまだ冬並みに寒い。それに加えて、室内じゃなくて外だ。雲ひとつ無い快晴の日の夜はよく冷える。想像しただけで体が冷えた気がした。ヤバイよこる軽く殺されかけてる!
「ここのドアも、俺が何回も蹴り飛ばしてっから頑丈なのに作り替えられちまったからなぁ。この厚さは無理だ。携帯も切れちまってるしよ。」
「!携帯!」
がさがさとポケットを漁る。入れたはずだ、入れた、はず…、あれぇ…?
「…無い。」
「チッ。」
「ごめんなさいぃぃぃ!」
2時間後。
「あー、暗くなってきちゃったなー。母さんたちなんで今日旅行に行ってんだ。」
「…腹へった。」
「あ、飴ぐらいしかないですけど、いります?」
「……………もらう」
「!(なんか、かわい…!)」
さらに2時間後。
「さむっ…。阿久津さん大丈夫ですか?」
「あぁ。」
「あったかいのが恋しいな…」
「おい、」
「?はい、」
「こっちこい。」
「?はぁ。」
ぐいっ
「!?阿久津さん!?」
「あったけぇ。おまえ、子供体温だな。」
「人間カイロにしないでくださいぃぃい!(なんかどきどきするから!やめて!)」
またさらに2時間後。
「…阿久津さん。」
「あ?」
「う、眠いです…」
「……」
「ごめんなさい起きてます!」
「いや、寝てろ。」
「へ?」
「俺が起きててやる。だから、寝ろ。」
「…はい。(あったかー…)」
翌日5時
「ん…あ、おはようござ…って、寝てる…。これ、外してくれないかな…外れない。でも、あったかいからなー。いっか。」
「…(起きるタイミングを無くして起きようにも起きれない)」
「ちょっとなら、いいよね?」
ぎゅうっ
「!?」
「おやすみ…」
「…………寝たか。」
ここから始まる
二人でいるのが当たり前になるまで、あと少し。